ベースは1949年製ベロセットMAC
過去にもカワサキの2ストローク5気筒・4気筒や、カワサキZ系V8やV12、そしてホンダSS100(V2)、ホンダRC374(6気筒)などの怪作!? を作ってきたミルヤードさんですが、それらの作品に比べると今回のベロセットVツインはまるでメーカー純正 のような、まとまった仕上がりが特徴です(※氏の過去作は、Lawrenceの過去記事をご参照ください)。
最新作の"698cc・Vツイン"のベースとなったのは、英国の名門ベロセットのヒット作である単気筒スポーツのMAC(OHV350cc)です。往復運動するパーツであるプッシュロッドを軽く・短くするため、カムシャフトを高く配置しているのが、ベロセットOHV単気筒のメカニズムの大きな特徴です。
A bit more progress on my 1949 Velocette V Twin - Rocker boxes fitted pic.twitter.com/tu5ZnUiUGn
— Allen Millyard (@AllenMillyard) 2018年11月2日
タイミング側カバーのデザインもちゃんと戦前型ベロセット単気筒の意匠を踏襲していて、とてもハンサムなルックスのVツインになっています。リアシリンダー側は、吸気・排気がオリジナルとは逆にデザインされている点もスゴイ工夫だと思いました。
なかなかの高パフォーマンスが予想されます・・・
ベロセットというメーカーはなかなかユニークなメーカーで、OHV単気筒よりも先にOHC単気筒の高性能モデル「Kシリーズ」をデビューさせていました。余談ですが「K」はカムシャフトの意味です。なんでCamshaftの「C」じゃないの? と不思議に思う方も多いと思いますが、ベロセット創業一家のグッドマン家はドイツ移民なので、ドイツ語由来の「K」なんですね。
Kシリーズは1920年代に登場した一方、OHVの「Mシリーズ」は1930年代にデビューしました。MシリーズはKシリーズより安価ながら、Kシリーズに匹敵するほどの高性能OHVスポーツエンジンに仕上がっており、その基本構造は戦後期のベロセットの名機であるベノム系500ccにも継承されることになりました。
そんな高性能ぶりを誇るMシリーズのMAC用単気筒を x2 しているワケですから、ミルヤードさんのベロセットVツインはかなりいい走りをするでしょうね・・・。
創業から1970年代初頭の終焉まで、単気筒モデルの名車を多く生み出したベロセットは「モデルO」そして「LE」という2気筒車を製作していますが、モデルOは試作車で終わり、LEは商業的な成功には至りませんでした。
戦後はトライアンフの成功により、パラレルツイン(並列2気筒)が英車の世界ではブームとなりました。そして戦前の英車に多かったVツインは、ビンセントという例外を除けばすっかり廃れることになりました。歴史に if はありませんが、もしベロセットが戦前にVツインを作っていたら・・・という夢想を現実にしたようなミルヤードさんの作には、歴史的ロマンを感じてしまいますね。
その出来栄えを、ぜひ動画でご確認してください! なお走行動画については、本人のYouTubeチャンネルに掲載されているものがより見応えがあります!