戦後、世界ロードレースGP(現MotoGP)が成立した1949年から10年を経て、1959年からホンダは日本のメーカーとしては初めてGPへ挑戦しました。この連載は、今日に至るまでホンダのマシンに乗って世界タイトル(個人)を獲得した英雄たちを紹介するものです。今回は最高峰500ccクラス5連覇の偉業をホンダNSR500とともに成し遂げた、ミック・ドゥーハンです!

ホンダでGPデビューし、キャリアを通してNSR500に乗る

1965年に豪州ゴールドコーストに生まれたドゥーハンは、1980年代から地元のスーパーバイクカテゴリーなどのレースで頭角を現し、レース関係者から注目を集める存在になりました。そして1987年にはヤマハから鈴鹿8耐に参戦(結果はリタイア)。翌1988年の8耐はワークスの資生堂TECH21に起用され、平忠彦と組んで参戦します(決勝9位)。

しかし、GPでのデビューはヤマハではなくホンダからで、1989年の日本GPからNSR500を託されることになります。この年ドイツGPで初表彰台(3位)を獲得したドゥーハンは、ランキング9位というGP初年度の成績を残しています。

1990年、地元オーストラリアGPを走るM.ドゥーハン。シーズン最終戦のレースで彼は2位表彰台を獲得しました。

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1990年は、第14戦ハンガリーGPで初優勝を記録し、年間ランキングも3位にジャンプアップ。1991年は3勝をマークしてランキング2位になり、一躍将来のチャンピオン候補としての存在感を高めることになりました。

画像: 1991年開幕戦の日本GP、ケビン・シュワンツ(34、スズキ)、ウェイン・レイニー(1、ヤマハ)、ジョン・コシンスキー(19、ヤマハ)の前を走るドゥーハン。最終的にドゥーハンは、2位になりました。 en.wikipedia.org

1991年開幕戦の日本GP、ケビン・シュワンツ(34、スズキ)、ウェイン・レイニー(1、ヤマハ)、ジョン・コシンスキー(19、ヤマハ)の前を走るドゥーハン。最終的にドゥーハンは、2位になりました。

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そして1992年、ドゥーハンは開幕の日本GPから4連勝をマーク! しかし第7戦ドイツGPでシーズン5勝目をあげたあとのダッチTT(オランダGP)予選で大クラッシュを喫し、長期欠場を強いられることになってしまいました・・・。

大怪我を克服し、500ccクラスの絶対王者へ

1993年、ドゥーハンはシーズン初勝利を第9戦サンマリノGPで記録しました。

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ドゥーハンがGPキャリアをスタートした当時は、ヤマハのウェイン・レイニーやスズキのケビン・シュワンツという実力者が覇権争いを演じていた時代でした。その中でホンダの新世代エースとしての期待を背負っていたドゥーハンでしたが、先述の怪我による影響は長引き、1993年のサンマリノGPでの復活勝利までは多くのレースを消化することになりました。

そんなドゥーハンの初戴冠は1994年でした。このシーズンにドゥーハンは9勝を記録。1989年のエディ・ローソン以来となる最高峰500ccタイトルをホンダにプレゼントしました。

1997年、年間ランク2位の岡田忠之(7、ホンダ)と同1位のドゥーハン。このシーズン15戦で、ドゥーハンは12勝、2位2回、リタイア1回というパーフェクトに近い成績をおさめました。

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その後5年連続でドゥーハンは500cc王者をNSR500で守り続けました。トラクションで有利なビックバン=位相同爆のファイアリングオーダーが流行した当時ですが、ドゥーハンはあえて等間隔爆発のスクリーマー仕様のNSR500を選択したりしました。

これは絶対王者である自分の選択に対し、同門のホンダ勢を含めるライバルたちが心理的に混乱することを読んでのチョイスでした。レーストラック上の勝負でもライバルを圧倒し、それ以外の時間もライバルたちの心理をコントロールするという、「ドゥーハンの支配」が続いたのが当時の500ccクラスだったのかもしれません。

1998年は、「ドゥーハン王朝」最期のシーズンとなりました・・・。

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ドゥーハンの支配は永遠に続くと錯覚させるほど、ドゥーハンの強さは際立っていました。しかし、NSR500に乗って11年目のシーズンとなった1999年、ドゥーハンは第3戦スペインGPの予選で雨の中ハードクラッシュに遭います。そしてこのとき負った大怪我が原因でドゥーハンはGPから引退することになりました・・・。

最高峰タイトル獲得5回、そして通算54勝。これら記録はすべてホンダNSR500で記録したものであり、現時点でホンダライダーがひとりで獲得した最高の勝利数記録となっています。

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