GSX-R1000Rの感想は?
ちなみに今回の試乗は一般公道オンリーです。
サーキットテストも考えましたけど、世の中のライダーの大半は公道でバイクを楽しむものですからね。
それに彼はちゃんと常識的な走りで楽しむことを心得ています。だから、ボクたちみたいな普通のライダーにも参考になると思うんです。
とはいえ上手い……なんというか走る姿が美しい……ライディングフォームに惚れ惚れします。
ひとつひとつ、確かめるようにGSX-R1000Rを走らせていました。
中野「このバイクは“素”がいいですね。エンジンは低速から力があるけど、パワーが完全にコントロールされてる印象です。オートシフターもすごくいいし、スロットルの開け閉めで、車体の姿勢が不安定にならない……ハンチングが絶妙に無いんです。ハンチングが強いと全然曲がれないですから。ボクはけっこうそこを気にするんですけど、GSX-R1000Rはそうとう真面目に作られていますね」
ひととおり乗って、GSX-R1000Rの最初の感想がこれ。そして……
中野「あとはフルパワーのAモードが公道でも使えて、楽しめることに驚きます。でも、ボクはBモードの余裕がすごく良いと感じました。良い意味で“間”があって、最終的にスポーティに楽しめる。それにライディングポジションが緩やかだから、ツーリングにも行けるかなって思える。これもけっこう大事なことです!」
中野真矢は基本的にエンジン好きです。特に4気筒エンジンが大好きなんですが、GSX-R1000Rのエンジンはかなり気に入った様子でした。
中野「でもキャスター角がすごく立ってて、そこは上級だなと思いました。クイックに曲がります。かなりフロントが近く感じますね。ブレーキで高い負荷をかけると、すこしノーズダイブが強い。サーキットに持ち込むなら、フロントのサスペンションのセッティングを調整したくなると思います。そうしたらサーキットだと普通になると思う。」
ちなみに、スズキのスポーツバイクは特徴として、伝統的にキャスター角が立っていて、ステアリングダンパーありきで設計されると聞いたことがあります。
GSX-R1000Rは電子制御ステアリングダンパー装備。他との違いを明確に把握するセンサーはさすが元プロライダーです。
中野「スズキのGSX-R1000って、このモデルで7~8年ぶりのモデルチェンジだったんですよね? その間にスズキはmotoGPに復活していますけど、そういうテクノロジーがちゃんと入ってる。そうじゃなきゃ、久々のモデルチェンジでこんなに進化しないはずです。」
次はGSX-R125!
そして、GSX-R125の登場です。200馬力級のGSX-R1000Rに乗った直後に15馬力の125ccに乗る。
これには一抹の不安もありました。
GSX-R125はすごく良いバイクですが、ABS以外の電子制御なんてありませんし、パワーもなければ豪華パーツで完全武装している訳でもない。
先に125に乗せておくべきだったか? と思いましたが、いまさら仕方ありません。
準備を整えて試乗に出る中野真矢を見送ります。
そして戻ってくるのを待つのですが……なかなか戻ってこない……
GSX-R1000Rの時よりも戻ってきません(汗)
そしてようやく戻ってきたと思ったら、バイクを降りてからもヘルメットも脱がずにGSX-R125のまわりをぐるぐる回って、再び眺めてました。
この日は36度越えの真夏日。暑いからヘルメット脱いでいいですよー?と声をかけると……
中野「よく出来てるコレ! 乗ったら笑顔になる。良いバイクは、やっぱりそれが基本ですね!」
と、ヘルメットの中でこの表情! やったぜGSX-R125!?
中野「すごいですよ。基本が全部詰まっています。これがちゃんと乗れない人はGSX-R1000Rは乗れないでしょうね。ポテンシャルを引き出せない。GSX-R125は軽いから自分がシートのどこに座るか、ステップへの荷重をどうするかを考えて乗るんです。腕の力もちゃんと抜いて……うまく決まると、いきなりすごく曲がるようになる」
中野「それにエンジンも上まですごく回りますね。こんなに回して大丈夫かな?って思うほどに回るんです。しかも単気筒エンジンなのにハンチングが出ない。ここは、さっきのGSX-R1000Rにつながるものを感じました。なんちゃってレプリカじゃない。同じグラフィックを採用してるだけはあります。同じバイク、GSX-Rとして成立しています」
なんだかGSX-R1000Rの時以上に中野真矢が興奮しています。っていうか嬉しそう!
中野「ギアチェンジの節度とかブレーキフィーリングも同じ。GSX-R1000Rをほどよくスケールダウンしたような感じなんです。随所にこだわりがある……スズキがここまでやるとは…不勉強で本当にノーマークだったんですが、これは……欲しくなるバイクですね」
やっぱり上手い人が乗ってもGSX-R125ってそう思うんだ! とわかってひと安心(笑)
しかし、あまりにベタ褒めなので逆に聞いてみたくなりました。
なにか気になる部分はありましたか? という質問です。
そこで中野真矢が、ちょっとびっくりしたような顔をしました。
中野「そういえば、無い……ですね。特に気になった部分がひとつも無い。もちろん1000に比べてパワーが……とか、ブレーキが……というのはありますよ。でもそれがすべて許せる。大型バイクに乗った後にすぐ乗って、すべてが許せる。何の違和感も無いというのが、やっぱりいちばんなのかもしれません」
これを聞いた瞬間は、GSX-R125って本気でスゴいと思いました。
元プロライダーが乗って「楽しい!」って言ってくれるだけでもスゴいのに、悪く感じた部分がひとつもないって……それって、ものすごい高評価じゃないでしょうか?
中野「ここまで遊び心のあるバイクは他になかなかありませんよ。こういうのはイタリアンメーカーにしかできないと思っていましたが、スズキがそれをやってくれるとは!」
中野「マフラーもメガホンタイプでちゃんとデザインされてます。正直、最近のバイクはどこを目指しているのかわからないと感じることもあったんですが、これは方向性がハッキリしています。エンド部分の処理もこだわってますね」
中野「それと、このダクトです。跨った時に下に見えるんですが、それがカッコいい! ショーバイクみたいです。あとはスプロケットカバーがスゴいんです。こんな凝ったデザインのスプロケットカバーなんて見たことありませんよ」
ここまでの高評価をGSX-R125が獲得するとは……気に入ってもらえると嬉しいとは思っていましたけど、予想をはるかに超えてきました。
なんだかGSX-R125を中野真矢がいたく気に入ってしまったようで、変な話ですが、すこし悔しい気分になってしまい(笑)もういちどGSX-R1000Rに乗ってもらうことにしました。
高速道路へGO!
高速道路はいかにGSX-R125が良いバイクでも排気量が125ccである以上、乗れません。
ここはGSX-R1000Rの独壇場です!
さぁ、改めてGSX-R1000Rはどうでしょう?
中野「結果的に高速に乗ってみて良かったです。さっき感じた“良さ”が余計によくわかりました。スロットルの開け閉めが本当にいいですね。それに高速域ですごく安定感が出てきます。直進安定性もすごくいい。このバイク、GSX-Rは一般道を走ることにすごくこだわりを感じるんですよ。スーパースポーツとしては快適な乗車姿勢も、足着き性もUターンのしやすさも、最低限のところは全部押さえてる。ちゃんと人が乗って、走ってテストしているんだろうと感じます。そうでないと、こうはなりませんよ」
GSX-R=公道で走るスポーツ
125も1000も、中野真矢にとってははじめてのGSX-R。
こんなに楽しんでもらえるならサーキットも走らせれば良かったかな、と試乗後にすこし思ったのですが……
中野「いや、今日は公道で良かったと逆に思っています。最近はサーキットでの走りしか見ていないバイクも増えています。逆に言えばサーキットに持ち込めば、セッティングなんかもある程度、どんなバイクも揃ってきちゃうんです。だけどGSX-Rっていうバイクは公道で走ることにも強いこだわりがあることを感じられましたから」
中野「GSX-R1000はいいぞ、って聞いていた、その理由がわかったように思います。スーパースポーツでサーキットで良いタイヤを履いて、ハマると速いっていうだけじゃないんですね」
中野「でもやっぱり驚いたのはGSX-R125です。この排気量のスポーツバイクとして本当にうまくまとめてあります。13000回転も回るエンジンもすごいし、スロットルのオンオフなどバランス感が1000と同じ。(重量が)軽いぶん色々と試せて、テクニックが全部つまっているんです。これまで色んなバイクを乗ってきた人が乗っても趣味として楽しいでしょうし、もちろん初心者だって楽しめます」
そして最後に中野真矢が、もう一度言いました。
中野「2台ともGSX-R。125にも同じカラーリングが採用されているだけはあります。ハンパないですね、GSX-R125!」
中野真矢も絶賛!?
みなさん、これがGSX-R125っていうバイクなんですよ!