参戦の意思決定は、MVとファンドの首脳によるもの
モータースポーツ総合サイトのSPEEDWEEK.comが、MVアグスタのテクニカル・ディレクターのブライアン・ギレンに行ったインタビューによると、このMoto2参戦はMVアグスタ社長のジョバンニ・カスティリオーニと、MVの資金調達役をしているブラックオーシャン・インベストメントファンドのティムール・サルダロフにより決断されたもの・・・とのことです。
2014年にメルセデス-AMGはMVアグスタの株式25%所得したものの、昨年これを手放したことによりMVの経営がアブナイ・・・という話がささやかれたのは記憶に新しいです。結局ブラックオーシャンが支援するファンド経由のお金で25%の株は買い戻されることになりました。
ご存知のとおり、MVアグスタは長年SBK(世界スーパーバイク選手権)とSSP(世界スーパースポーツ選手権)に参戦していますが、残念ながらタイトル獲得には至っていません。今後SBKとSSPの活動をどうするのかは定かではありませんが、レース活動にお金を使うならSBKやSSPよりもステータスの高い世界ロードレース選手権の方が広告効果は高い・・・という判断を経営者と出資者が下すのは不自然ではないでしょう。
また資本が豊富ではない小さな会社のMVアグスタとしては、お金のかかる量産車開発と並行して速いレーサー作りをしないといけないSBKやSSPより、Moto2のほうが小さいプロジェクトでできることもこの決断に影響しているでしょう。
Moto2であればエンジンは既存のもの(この場合トライアンフ765cc3気筒)が使え、設計・製造の必要はなし・・・。車体を用意すればとりあえずOKというのは、メーカーにとって魅力的な側面に他なりません。
将来のMotoGP参戦も見据えて・・・?
インタビュー記事中では、MVアグスタのMoto2マシンについてもB.ギレンからしつこく(笑)聞き出そうとしていますが、MV製Moto2シャシーがアルミツインスパーになるのか、スチールパイプのトレリスフレームになるのか・・・は明かされませんでした。
開発には4年契約を結んだフォワード・レーシングのほか、コンストラクターとして活躍するスッターも協力するようです。しかし、スッターが車体を設計するのか、MV側が主導して設計するのか・・・その辺もB.ギレンは濁しています。あくまでスッターは、ブレーキメーカーやサスペンションメーカーと同じ「サプライヤー」のひとつで、新しいMoto2マシンはひと目でMVアグスタであると理解できるでしょう・・・というコメントですが、これはやがて明らかになるのを楽しみに待ちたいです。
自社製品のMV F3(675cc3気筒)の、マーケットでの直接のライバルとなるトライアンフのMoto2供給エンジンを使うことにはついつい違和感を覚えてしまいます。ただこれは一般の2輪ファン的な見方なのかもしれません。
今年度までのMoto2エンジンであるホンダ製600cc4気筒を使ってKTMはMoto2に参戦し、活躍しています。Moto3、MotoGPでは敵対するホンダとKTMですが、KTMとしてはホンダ製エンジンを使うことはあくまでルールなので、特に意識することなんてないでしょう。
2輪ファン目線ではMVもトライアンフはマーケットのライバルですが、会社の規模も販売網も大きいトライアンフと自分たちは違う・・・と彼らとしてはそれほど意識していないのかもしれません。ともあれ、B.ギレンはトライアンフ3気筒に代わる来期のMoto2は、「チャンス」と捉えているようです。
「(来期のMoto2はホンダからトライアンフにエンジンが変更されるので)誰もが最初から始めなければならない。私たち(MV)はすでにこの構成(3気筒レーサー)についての知識を持っているので、上手くいけばそれは私たちの小さな利点になるでしょう」とB.ギレンはインタビューに答えています。
またB.ギレンはなぜMoto2を選んだのかという質問に対し、「まずMotoGPのパドックに足を踏み入れることが大事」とイミシンなコメントをしています。Moto2を選んだ理由はシンプルに、MotoGPに参戦することは簡単ではないから・・・しかし将来の目標として設定しているとB.ギレンは語ります。
新しいMV F4の開発など、ビジネスの面でこなさないといけない課題が山積みのMVアグスタですが、Moto2参戦が全スタッフのモチベーションアップにつながって、いろいろなことが上手くいけば良いですね・・・。現在の超高度化しているMotoGP参戦というのはとてもハードルが高い目標にも思えますが、その日が来ることを期待したいです!