"伝統"を大事にする姿勢を打ち出すスズキGB!
スズキGBのウェブサイトを見るとわかりますが、そこには「Vintage Parts」のセクションがあり、1990年までのビンテージモデル、1990〜1999年の間のモダン・クラシックのスズキ車用パーツセクションなどのコンテンツが設けられています。
従来、国内の4メーカーは旧いモデルのパーツ供給に対してはある意味"冷淡"でした。長い歴史のなかで数多くのバラエティ豊かな車種をリリースしてきた4メーカーが、すべての歴代機種のパーツを供給し続けることは体制的に無理・・・なこともあり、ユーザーは仕方ないことと受け止めているのが現状でした。
スズキGBの試みは全機種をカバーするものではありませんが、なるべく多くのスズキの旧いモデルを愛する人を助けたい・・・という想いを感じることができます。
ベースはGSX1100SD!
「チーム・クラシック・スズキ」はそんなヘリテージを大事にしようとするスズキGBの姿勢から生まれたチームと言えます。今年のマン島クラシックTTではスズキXR69を参戦させ、マイケル・ダンロップの手により見事スーパーバイククラス優勝を飾っています。
チーム・クラシック・スズキは、来年度のプロジェクトとして、来年5月のドニントンでの4時間耐久レースにこのカタナ・レーサーを出場させる予定です。ライダー3名の名前は未だ明らかになっていませんが、スズキGBのコネクションで有力なライダーを集めるのでしょうね。
一方では批判も・・・? 今後の活動から目が離せませんね!
チーム・クラシック・スズキの活動は、メジャーメーカーがヒストリック・ロードレーシングの世界に積極関与するというエポックな出来事と言えますが、昔からこのジャンルを愛している人たちからは非難めいた声も上がっているのは事実です。
先述のクラシックTTで優勝したXR69は、実のところ純然たる「クラシック」ではありませんでした。エンジンは元のGS系4気筒ではなく、GSX-R系の4バルブ4気筒に交換。そのほかブレーキなどのパーツも、クラシックな時代にマッチしないモダンパーツを多用していました。
ヒストリック・ロードレーシングの根本には、古き良き時代へのリスペクトの念があります。当時なかったモノを多用する、チーム・クラシック・スズキのXR69の出走をオーガナイザーが認めたことは、ヒストリック・ロードレーシングの死を意味する・・・と嘆くファンも少なくありませんでした。
旧来、ヒストリック・ロードレーシングの対象とする時代は1972年以前、という定義でしたが、時が過ぎるにつれ1970〜1980年代と、その対象とする時代も拡大する傾向にあります。1972年以前のシンプルな構造のレーシングモーターサイクルは、プライベーターや小さな企業レベルでレプリカやリプロパーツを作ることが可能でしたが、1980年代以降の複雑なメカニズムを持つ近代レーシングモーターサイクルとなると、レプリカを作ることは難しいでしょう。
そういう点では、チーム・クラシック・スズキがXR69で行った、エンジン換装やモダンパーツ多用は、ある意味仕方ない面もあるとは思いますが・・・おそらくこの問題に関する議論は今後も続いていくと思われます。
ともあれ、チーム・クラシック・スズキの今後の活動に注目せざるを得ない状況は続きそうです。このカタナ・レーサーがどれだけの走りを披露するのか・・・来年を楽しみに待ちたいですね。