73歳の頑固な老婆カツは、出版社に勤める娘とその息子(孫)との三人暮らし。あるとき、孫をダシにされた振り込め詐欺で、虎の子の100万円を騙し取られてしまう。そのことで娘と喧嘩になって、家を飛び出してしまったカツは、寂しさを紛らせるために立ち寄った不思議な写真館で肖像写真を撮ってもらうのだが、その瞬間から、なぜか彼女は20歳の姿に戻ってしまうー。
73歳のカツを倍賞美津子さん、20歳のカツを多部未華子さんが実に巧みに演じている。
多部未華子の芸達者ぶりが光る
本作は二人一役。ただし73歳と20歳の三世代ほど離れた同一人物を演じている。
主人公のカツは、不思議な写真館を出てから20歳の頃の容姿に戻り、大好きな女優であるオードリー・ヘップバーンと原節子からとった大鳥節子(おおとりせつこ)として、孫のバンドのボーカルを務めることになる。
つまり大鳥節子は20歳ながら中身は73歳、ということ。しかし、若者と交わり、時を超えた新しい体験をすることで、身も心も若返っていく。そんな難しい役柄を多部未華子さんは巧みに演じている。バンドの歌姫を演じるだけあって、歌声も披露するが、素晴らしく上手いというわけではないものの、可愛らしく可憐な味わいがスクリーンの内外を魅了する。
親の心子知らずだが・・・
苦労ばかりして、子供や孫のために必死で働いて、懸命に生きてきた女性が、不思議な魔力によって若返り、初めて自分自身の人生を生きる。カツは体の弱い娘を育てるために、自分の幸せを犠牲にして、女手一つで彼女を育ててきたが、そんな想いが娘にとって重荷になってしまう。親の心は子供に届いていないわけではないのだが、子供には子供の苦い時間はあって、親の想いを受け付けられない時もあるのだ。
そんな親子の心の蹉跌、すれ違いに傷ついたカツは、思いもしない奇跡にすがるのだが、孫の生死の危機にあって、せっかく得た新しい人生を諦めなければならない選択を迫られる。
この映画は、老人が若返ることで生まれるさまざまな可笑しみと微笑ましさを描くコメディであると同時に、人が”ささやかな幸せ”を得ることを、いくつになっても願うという、あたりまえの真実を描いているのだ。
原作はアジア各国でリメイクされた韓国映画。
本作は韓国映画『怪しい彼女』のリメイク。
ただ贔屓目ながら、本家の”彼女”より多部未華子さんの可愛らしさは上をいく、と思うw。
多部未華子さん演じる、体は20歳、心は73歳のヒロインに、あなたは必ず魅せられるはずだ。中身は老婆だと知りつつも、見終わった時には、多部未華子さんにだけでなく、倍賞美津子さんにさえ、恋している自分を発見するだろう。