横浜のうらぶれた街を舞台に、松田優作が売れないロックシンガー兼私立探偵 BJ を演じる。もっとも松田優作らしく、マイナーでB級、常に憂鬱で気怠い靄に包まれた、男臭さが煙る名作。

本作は、ロバート・アルトマン監督・エリオット・グールド主演のハードボイルド映画の傑作『ロング・グッドバイ』(原作 レイモンド・チャンドラー)をモチーフにしたと思われる。(『ロング・グッドバイ』もまた僕の大好きな映画の一つだ)

親友が殺され、その真相を探る探偵が危険を顧みずに調査を続けるうちに、やがて哀しくも残酷な真実を知ることになる。そして、その幕を自らの手で閉じる探偵。そんな『ロング・グッドバイ』のプロットを、ほぼ忠実になぞり、そして松田優作x工藤栄一(監督)x丸山昇一(脚本)の名トリオが、オリジナルの設定を加え、独特のムードの本作を作り出した。
正直、ストーリーはどうでもいい。松田優作が放つ、今の日本の俳優にはとても出すことができない危険なオーラと、暴力的なアクションの凄みをただ味わえばいい、そういう映画である。

主人公の、売れないシンガーであり探偵のBJを演じるのは松田優作。同じ探偵でもドラマ『探偵物語』の工藤ちゃんのような剽軽さや軽口を一切封じ、底知れぬ沈鬱な香りを纏った新たな探偵像を作り上げている。
BJの親友の刑事を演じるのは、やはり若き日の内田裕也。今の白髪の異様な姿しかしらない人は、見ても誰かわからないかもしれないが、演技こそ大根ながらロックシンガーならではの存在感と渋さは必見に思う。(ちなみに同じく若き日の宇崎竜童もカメオ出演している)

本作は、ぜひ、深夜に灯りを落として、強い酒をすすりながら観て欲しい。できるなら、一人で。


画像: ヨコハマBJブルース(予告編) www.youtube.com

ヨコハマBJブルース(予告編)

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