去る6月12日、幕張メッセにて新しいカスタムショーが開催された。
「BAY AREA Chopper&Custom Bike Show 」
このショーの最大の特徴は「参加したプロのビルダー(オートバイの製作者)同士で細かいジャッジメントをしてアワードを決める」というものだ。
主催は株式会社HCC代表渡辺まこと氏。
ゼロから新しいショーを開催する、など労力は想像すらつかない。途方もない構築にチャレンジした渡辺氏の想いをお伝えしたい。
Q : 開催しようと思ったきっかけを教えて下さい。
A : 理由は様々あります。たとえば日本最大のアメリカン・カスタムショーであるYOKOHAMA HOTROD CUSTOM SHOWがバイクでの来場禁止になったり、ハーレーインドアショーの草分けであったCool Breakerが終わったり。また多くのカスタムショーが10年目を迎えたというのも、ひとつの理由です。10年一昔、なんて言いますが、そろそろ新しい刺激があってもイイんじゃないかなぁと思ったのも本音です。もちろん、他のショーは、それぞれに素晴らしい運営をしてますし、見習うべきところは多いんですけど、どうしても人間、飽きというのが来てしまうと思うのです。そういう部分で、そろそろ新しいカンフルがあっても良いんじゃないかなぁとも思いました。またバイクで来れるショーが関東にもなければ、と考えたのも本音です。その中でチョッパージャーナルのショーではなく、ベイエリアチョッパー&カスタムバイクショーは、あくまでもチョッパージャーナルとは別のものとして考えています。やっぱり、そこはフラットな立場で運営したいと考えました。でなければシーンが盛り上がりませんので。
Q : 選考委員が選ぶのではなく、ビルダーズチョイスでのジャッジ形式をとっているのがBACCの特徴ですがジャッジペーパーはかなり細かったと聞きました。ジャッジペーパーのこだわった点などあればお聞かせください。
A : ジャッジペーパーに関しては、確かにかなり細かいと思います(笑)。でも、僕としてはビルダーズチョイスという審査の方法が最もフェアなアワードの決め方なのではないかなぁと思って今回の方式に至りました。
まずカスタムバイクを審査する上で何が重要かを考え、スタイルとオリジナリティは10点満点、その他、Rideabillity(走行性能)、ボディワーク、ペイントワークがそれぞれ5点づつ。ジャッジペーパーの中で5台を選んで、その中で得点をマークシートで記入して頂きました。また事前に走行動画を送ってくださった方には5点が加点されます。
それに加えて、クラス部門賞を決める上で無得点のものがないようにクラスごとに好きなバイクのエントリーナンバーを記入するスペースを設けました。ここで記入されたショップさんは5点が加点されます。
なぜ、このような細かいジャッジペーパーにしたのかというと、海外のショーのようなビルダーズチョイスをしたかったという部分が大きいですね。でも僕が今まで参加した海外のショーでもジャッジの方法によっては、ディテールを凝れば凝っただけ、ペイントが派手なら派手な分、というカタチで点数が入るものがほとんどでした。しかし、それだと格好いい、悪いではなく、やればやった分だけのカスタムが優勝してしまうことが目に見えていたので、スタイルとオリジナリティは点を高く設定しました。ビルダーズチョイスとは言っても、ただ好きなバイクの番号を書くだけでは人気投票になってしまいますし、項目ごとに点数が分かれていた方が審査する側も真剣にジャッジすると思ったので、今回のやり方とさせて頂きました。それと同じ理由でコンペティションに参加した方は同一条件の元、審査をさせていただきました。同じカーペットの上で同じショーボードといった具合に。ここもブースの飾り付けコンテストにしたくなかったというのが理由です。プロモーションとして宣伝を考えている方、ショーで順位をつけられたくない方にはエキシビジョンのブースを用意しています。こちらはベストディスプレイの対象となっています。
すでに日本のカスタム、チョッパーは世界規模で見てもトップレベルにあると言っても過言ではありません。だから更なるレベルアップということではなく、そのハイレベルなバイクの中で何が凄いのかをガチガチに決めるショーがあってもイイんじゃないかなぁと思ったのも本音です。たとえばユーザーさん一人、一人にとって自分のバイクが一番だと思います。わざわざ順位をつける必要もないのかもしれません。でも、今までのカスタムシーン、チョッパーシーンを見てもショーでのアワードを目指して創られたカスタムが全体を牽引して、それがレベルアップに繋がったという事実もあります。たとえばフィギュアスケートとかシンクロのように厳格に点数付けする、というのも今回のショーのコンセプトのひとつでした。結果は、僕自身も予想出来なかったので、ひとりのカスタムファンとして楽しんだというのも本音です。
Q : 開催した感想を聞かせてください。
A : ハッキリ言って疲れました(笑)。今回、ショーを運営するにあたってYOKOHAMA
HOTROD CUSTOM SHOWを主催するムーンアイズさんにイベント・プロモーション会社として運営を発注させて頂いたのですが、ムーンアイズさんがいなければショーは開催できなかったと思います。搬入や搬出など、やっぱり慣れているのでスムースですし、ショーを運営するプロフェッショナルとはどういうものかを見せて頂いて勉強になりました。
その中で僕としては同一条件の元にバイクを飾り、厳格なジャッジペーパーで順位を決めるという部分にこだわったのですが、そこに集中しすぎたというのが大きな反省です。ショーの当日は、ほとんど控室で集計しているという状態だったので……。
ショーの会場のパッケージとしては満足しているのですが、来場したお客さんを楽しませるというコンテンツが少なかったのは反省ですね。たとえばライブとかも「音がウルサイとお客さんと話が出来ない」という声を多く聞いたので、あえてやらなかったのですが、やっぱり二時間に1回くらいは、何か催しをして、来てくれたお客さんを楽しませるという気持ちじゃなければダメだと思いましたね。たとえばせっかくゲストを招いたのだからトークショーをしたり、何かイベント的なものがもっと多かった方が良かったと思います。
また駐車場と会場が遠くて、その経路の案内も十分じゃなかったのも反省です。この点は来年には駐車場の場所自体を会場横に出来るよう交渉していくか、シャトルバン的なものを出すかで改善したいと思います。
あとは協賛品などを今回、アワードを獲ったビルダーさんにプレゼントしたのですが、この点も来場者の皆さんに還元した方が良かったなぁというのも反省です。もっと来るお客さんを楽しませるエンターテイメント的な要素がないとダメなんだということを第一回目でつくづく思いました。
なんだか反省ばかりになってしまいましたが、同一条件でバイクを飾るという部分とかショーのディレクターだったムーンアイズの角さんが考えた一台のバイクを全方向から見れるというレイアウトには満足していますので、キープすべき所はキープし、改善するべきところは改善し、という感じで継続したいと思っています。
Q : 来年はどうなりますか?
A : 来年も幕張メッセで開催する予定です。こちらとしては6月の第一週の日曜にしたいのですが、ここは今年のように二週目になるかもしれません。いづれにしても6月上旬に幕張メッセ、というのは間違いないと思います。
たとえば会場横に駐車場が設置出来た場合、ライドインの入場者対象のキング・オブ・パーキングロットなども出来ればいいなぁと考えているのですが、ここら辺は会場側との交渉次第になります。今年は十分に出来なかったんですが、ホームページでマメに情報を発信できればと思っていますので、皆様、ヨロシクお願いします。
BAY AREA Chopper&Custom Bike Show HP http://www.baccshow.com
やったからこそ気づくことがあったと渡辺氏。「次はもっと来場者の皆さんにやさしい、楽しめるショーをしたい」と思ったそう。頭の中にはアイデアが湧き出し、来年が待ち遠しいと語ってくれた。今年のショーの様子は7/27日発売の CHOPPER JOURNAL MAGAZINE http://www.chopper.jp にて掲載されるのでぜひ見て欲しい。「Chopper&Custom Bike」と名打たれた理由がわかるはず。今年誕生した全てのバイク好きに贈るカスタムショーの進化が楽しみでならない。
All photo & text NOZOMI FUJIMURA