人の生命を救うというよりも、後世の人のために文化そのものを守ろうとした、勇気ある人々の実話
実話を元にした作品。ヒトラーが元々アーティスト志望であったことはよく知られており、世界最大級のミュージアム、総統美術館創設のため、世界中から美術品を略奪していた。
戦争はドイツの敗色が濃くなってはいたが、集められ隠された美術品の行方はわからず、終戦を迎える頃には完全に隠匿されてしまう可能性が高かった。
そこでモニュメント・メンが結成され、美術品の隠し場所の探索と追跡が行われることになったわけだが、終戦近い当時でさえ、戦争は人の生き死にの話であり、美術品がどうなろうと知ったことじゃない、そういう声も多かったという。さらに、モニュメント・メンは美術品に関するプロであり文化人であった。短期間ながら軍事訓練を受けてからの派遣ではあったが、まだまだ危険な戦場にあって、彼らの成功を期待する人は少なかったともいう。
しかし、ジョージ・クルーニー演ずるストークス館長は、モニュメント・メンのメンバーたちに、こういう。今自分たちが危険を冒してでも美術品の奪還に動かなければ、文化や文明そのものが破壊されてしまうと。
事実、ヒトラーはナチスドイツの敗戦が決定したその時には、すべての美術品を焼却せよという恐るべき指令を発していたのである。
エンターテイメントとしても成立する優れた作品。
本作は、クリント・イーストウッド監督が作ってもいい題材。
彼が作ればもっと重厚な作品になったかもしれないが、ジョージ・クルーニー監督は 軽妙さを残し、娯楽性を少し強めに押し出す作りをした。
それは成功していると思う。命を賭ける対象が、人間であっても美術品であっても、崇高な目的のために戦いを決意した人々の、情念溢れる行動を、本作は正しく表現し、さらにエンターテイメントとして成立させている。