東本昌平先生監修のモーターサイクルムックマガジン『RIDE』に掲載されている名車図鑑コーナー「絶版希少車黙示録」。今回は、『RIDE75』において、コーナー第42弾目にピックアップされたYAMAHA TRX850をご紹介。

スーパースポーツほど過激じゃないけど、ネイキッドよりもアグレッシブ。そんなパラツインスポーツ。

画像: ©モーターマガジン社

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シングル、ツインエンジンのレース、スポーツモデルに注目が集まったのは、レーサーレプリカブームが終わって、ネイキッドが始まって、400アメリカンの台頭もあった、レーサーレプリカ以外は何でもありの90年代に入ってから。

当時、BOTT(Battle of The Twin)というレースが、世界中の好きものたちの間で盛り上がっていた。
レースに優劣はないけれど、世界GPや全日本ロードレース選手権のガチな雰囲気とはちょっと違う。日本では2ストや4気筒のレーサーが至高と思われていた80年代、海の向こうのデイトナではコンストラクターの威信をかけた人気のレースとして認知されていた。マシンはドゥカティやハーレー、BMWなど。
その流れが、レーサーレプリカ後の日本にもやってきて、選手権ではなく草レース的な盛り上がりをした(レースの常で段々、先鋭化していったけれど)。
さらにスーパーバイク世界選手権でドゥカティが連覇しまくっていた時期でもあり、2気筒ロードスポーツってイイネ!な雰囲気が高まっていたころ……でも、なかった。日本メーカーには、それに見合うモデルが1台もなかったから。
4気筒よりパフォーマンスが落ちる=本気のスポーツはダメ、との信仰にずっとハマっていたメーカーは、このムーブメントにより、ハタと気がついた。カウル付きスーパースポーツモデルでも、「ハイパフォーマンス」と「楽しく走れる」ことが同義ではないことを。

最初に動いたのがヤマハだった。車体はアルミフレームではなく銅管のトラスフレーム。XTZ750から進化したTDM850の水冷5バルブ並列ツインエンジンを流用しながら、360度クランクを270度位相クランクに変更。これによって不等間隔爆発になり、トルク変動による路面をつかむ感覚、トラクション性能を重視した。また足まわりは、豪華ではないけれどフレームとエンジンに見合ったものを装備させた。
軽量コンパクトな車体。銅管パイプフレームのしなり、Vツインの特性に劣らないトラクション性能。誰かと速さを競うのではなく、見栄など関係なくスポーツライドを純粋に楽しむ。TRXは大人の味わいがする1台なのである。

画像: 水冷並列2気筒DOHCはヤマハの十八番だった5バルブ。/©モーターマガジン社

水冷並列2気筒DOHCはヤマハの十八番だった5バルブ。/©モーターマガジン社

画像: レーサーレプリカ時代を彷彿とさせるシートとシートカウル形状。ライバルとしたDUCATIの900SSがこういうタイプの形状だったことも無影響ではないはず。/©モーターマガジン社

レーサーレプリカ時代を彷彿とさせるシートとシートカウル形状。ライバルとしたDUCATIの900SSがこういうタイプの形状だったことも無影響ではないはず。/©モーターマガジン社

|文:濱矢文夫
|写真:松川忍

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