強さだけを求めて、相手が一人なら、必ず1対1で戦わなければならないこと以外はタブーを持たない異端の流派・逸刀流(いっとうりゅう)。若き統領の天津影久(あまつかげひさ)率いる逸刀流は、江戸中の剣術道場を蹂躙し、傘下に収めようと過激な暴力を振るっていた。彼らに両親を虐殺された少女・浅野凜(あさの りん)は、100人斬りの異名を持つ浪人 万次(まんじ)に用心棒を依頼する。凛の健気さに、死んだ妹の面影を見た万次は依頼を引き受け、逸刀流との戦いに身を投じる。一見勝ち目のない無謀な戦い。しかし、体内に血仙蟲(けっせんちゅう)を宿した万次は、不老不死の肉体を持っていたのだった。

©沙村広明先生・講談社

迫力ある圧倒的な画力による時代劇コミックの傑作

『無限の住人』(むげんのじゅうにん)は、沙村広明による日本の漫画作品である。『月刊アフタヌーン』(講談社)にて、1993年6月から2012年12月まで連載された。作者のデビュー作で、略称は「むげにん」である。
1993年アフタヌーン四季賞にて四季大賞を受賞した同名の読切作品が、単行本第1巻に「序幕」として収録されている。江戸時代の日本を舞台としているが、奇抜な衣装を身にまとう人物や独創的な武器が多数登場する。また、本作品の特徴として、主人公が「血仙蟲(けっせんちゅう)」とよばれるものを体内に宿して不老不死の肉体を持つという設定がある。1997年に第1回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞し、英語版が2000年にアイズナー賞最優秀国際作品部門を受賞している。
2008年にテレビアニメ化。2016年に舞台化。2017年に木村拓哉主演で実写映画化予定。

主人公の万次は隻眼の浪人です。
16歳の少女 凛を援けて、彼女の仇討ちのため、さまざまな武器を巧みに操る無頼の剣客集団 逸刀流との、幾度もの血闘に挑みます。

彼は八百比丘尼(不老不死で有名な伝説の尼僧。人魚の肉を食べて不死身になったという伝説があります)から授かった血仙蟲を体内に宿すことで、怪我をしてもすぐに治り、斬られても死なない不死身の肉体を持っているんです。
その血仙蟲を受ける前に、公儀(幕府)に歯向い、100人もの役人らを切った罪状を持っていて、100人切りと呼ばれています。つまり相当の剣の達人なわけですが、逸刀流の面々との戦いでは分が悪く、たびたび大怪我を負います。不死身の体でなければ、最初から全然勝てない、というのが、ちょっとどうなの?っとトーマス的には思いましたが、それはそれ。

彼には妹がいましたが、無頼な男達に殺害されるという辛い過去を持っていました。なので逸刀流との戦いに巻き込まれれば、ただでは済まないことはわかっていながら、薄幸の少女の依頼を受けてしまうのです。

画像: 敵のボスキャラ 天津影久との最後の決戦に挑む万次 www.amazon.co.jp

敵のボスキャラ 天津影久との最後の決戦に挑む万次

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虚しい”時代”との戦いに翻弄されていく最強の男達の悲哀と覚悟

本作、結構グロいシーンも多いので、女性はちょっと敬遠してしまう恐れもあります。
しかし、主人公を始め、敵も味方も含めて多くのキャラクターはとても魅力的です。なかにはゲスい奴らも出てきますが、男の目から見てもかっこいいし、女性にも惚れられそうな男達がたくさんでてきます。

また、逆にヒロインの凛もそうだし、強くてクールな女性キャラもたくさんでてきます。なにしろ、作中 最強の剣士は女性なんですから!

ストーリーとしては、平和ボケしていく侍達をなぎ倒し、力こそ正義、強さこそ武士の証という流儀をもう一度蘇らせようとする逸刀流と、彼らを仇として追う凛と万次の戦いに始まって、徐々に、逸刀流を目障りと断じるようになる公儀の刺客たちの三つ巴の戦いへと流れ、複雑に交錯していきます。

最強・最凶の敵と考えていた逸刀流と天津影久にも、一分の理があり、さらに幕府にも裏切られていく姿を見ながら、凛と万次の仇打ちも単純な復讐とは異なる心持ちへと変化します。時代や環境変化によって翻弄されていくという意味では、滅亡した恐竜同様に、逸刀流の最強剣士たちもそうだし、万次のような不死身の肉体を持つ、常人を超越した存在であっても、抗う術はありません。

凄まじいまでの剣戟の中、滅びていくことを自覚しながらも、闘いに誇りをもって向かう男達(先述のように女達もいます)。

漫画「キリン」の中で、車中心の社会の中で力を持たないバイク乗りたちが、それでも誇りを持って乗り続けていく姿が描かれていましたが、剣に生きようとした兵達が、その存在意義を問われるつらさと切なさを、本作は見事に描いているのです。

画像: 明治の世になっても歳をとらない万次。平成のいまでも、どこかを放浪しているのかもしれません。 www.amazon.co.jp

明治の世になっても歳をとらない万次。平成のいまでも、どこかを放浪しているのかもしれません。

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