オートレーサーである光雄氏を父に持ち、5歳からバイクに乗り始める。ポケバイ、ミニバイクとステップアップし、15歳でダートトラック修行のために半年間渡米。帰国後にロードレースに本格デビューすると、2年後の93年には、当時の全日本選手権最高クラスであるGP500クラスの市場最年少チャンピオンに輝く。94年より世界グランプリGP500クラスに参戦し、05年に世界スーパーバイク選手権へ。07年から全日本に活動の舞台を移し、最終戦を前にランキング3位という位置にいながら不慮の事故で逝去、享年32歳だった。
写真：赤松孝 / ヤマハ発動機 / モーターマガジン社 掲載元テキスト：中村浩史
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まるで漫画のようなシンデレラストーリー
たとえば、全日本選手権の最高峰・JSBクラスを、中学校を卒業してすぐの少年が制し、いきなりデビューイヤーにチャンピオンを獲得したと空想してみる。
彼はそのままの勢いでモトGP日本クランプリ大会にワイルドカードで参戦。勝手知ったるツインリンクもてぎとはいえ、決勝レースではバレンティーノ・ロッシやケーシー・ストーナーを相手に一歩のひかない第バトルを繰り広げ、トップ争いを演じていたラスト3周で、惜しくも転倒を喫し、リタイヤしてしまう。（中略）あのヤングボーイは誰だー。すぐにどこかの有力チームからGP参戦オファーが届き、彼はすぐに世界へと飛び出していく。まるでマンガのようなシンデレラストーリー。
しかしこれは現実に起きた話だ。
そう、ノリックこと阿部典史が現実に我々の前でやってのけた快挙なのだった。
1991年に中学を卒業するとすぐに、半年間の米国留学。高校には進学せず、ひたすら世界チャンピオンを目指した一途な青春だった。
1994年には鈴鹿サーキットで行われた世界GP日本グランプリにスポットで参戦し、世界レベルの堂々たる走りを見せて世界を驚かせた。当時の絶対王者ケビン・シュワンツやミック・ドゥーハンらを相手に一歩も引かない若者の姿に、
後にバレンティーノ・ロッシが「小学生の頃、毎日のようにアベのあのレースのビデオを見ていた」と語ったのは有名な話である。
96年になると、いきなり第3戦・日本GPでGP初優勝を達成。ランキングは5位でシーズンを終了。ヤマハ勢不振のシーズンでヤマハ最上位だった。
ノリックのトレードマークだった長髪。ばっさり切ったことがあったが、ロバーツやレイニーなどの他のレーサーに不評だったため戻したという。
1999年シーズン終盤のブラジルGPで、M・ピアッジやK・ロバーツと最終ラップの最終コーナーまで激戦を演じ、ふたりを抑えての優勝だった。
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