ミイラ取りがミイラになる典型的な展開
ウディ・アレン監督お得意の、教養高く、皮肉屋で強い厭世観を持つ主人公が喋りまくるラブコメディ。
主人公のスタンリーは中国人の扮装で超絶マジックを披露する手品師。天才的なトリックとテクニックで観客を魅了するが、観客を原始人呼ばわりするわ、スタッフはバカ扱いわと、その尊大で傲慢な物腰は、実に鼻持ちならない。数少ない友人であり幼馴染のハワードから、マジックのトリックを問われても「君がいい奴なら教えてやるよ」とにべもない。
だが、スタンリーは嫌な奴であっても悪い奴ではない。だから彼は、ハワードから「自分が見抜けなかった霊能者の嘘を暴いてくれ」と頼まれると、(自尊心も手伝ってだが)婚約者との旅行を延期してまで、協力に同意する。
ハワードに連れられてやってきたのはコート・ダジュール。
そこで出会った霊能師ソフィーはアメリカ人の美女。大きな瞳と快活な表情に魅了されてしまうスタンリーだが、そこは皮肉屋の本領発揮で、自分を惑わす女性の魅力を全力で否定する。しかし、彼女が知る由もないさまざまな事実をソフィが言い当てていくにつれ、ソフィーの霊能力を信じるようになるのである。
ウディ・アレン作品のファンなら楽しめる一作
やがて二人は恋に落ちるのだが、スタンリーがソフィに惚れるのはわかる。エマ・ストーン演じるソフィは美人だし、教養はないかもしれないが十二分に賢い女性だ。
しかし、コリン・ファース演じるスタンリーは、悪い人間ではなくても、とにかく人の嫌がることをズケズケというし、皮肉屋というより嫌味しか言わない。ソフィが彼に惹かれる理由がいまひとつわからないのだが、そこはよしとしよう。
観客からすれば、スタンリーの心根が優しいことはわかるし、二人が恋に落ちなければ物語は始まらないことも理解しているのだから。
ソフィの霊能力は果たして本物か。トリックがあるとしたら、あなたは見破れるだろうか。ウディ・アレン監督がしかけた騙しのテクニックと恋のマジックを楽しんでほしい。