http://www.classic-motorrad.de/v25/images/cm2014/2014-hockenheim-classics/André_de_Cortance_198
1978年から1988年までの約10年間、フランスのオイル・ブランドの「エルフ」が開発したモト・エルフを皆さんは覚えているでしょうか? エルフのバックアップにより、アンドレ・デ・コルタンツのアイデアを元に生み出されたELF Xを皮切りに、世界耐久選手権、世界ロードレースGPなどの実戦の場での磨き上げられたモト・エルフは、新しいモーターサイクルのシャシーデザインの可能性を世に示し、多くの反響を呼び起こしました。

前後片持ち方式・ハブセンターステアリングを採用。

画像: ELF X 1978-1979 デ・コルタンツが手がけた最初の完成車で、フレームレス、前後片持ちスイングアームなどの構成が特徴です。 エンジンはヤマハTZ750を使用しております。1978年2月のパリショーで公開され、会場の話題を独占しました。 www.lerepairedesmotards.com

ELF X 1978-1979
デ・コルタンツが手がけた最初の完成車で、フレームレス、前後片持ちスイングアームなどの構成が特徴です。 エンジンはヤマハTZ750を使用しております。1978年2月のパリショーで公開され、会場の話題を独占しました。

www.lerepairedesmotards.com
画像: ELF Xのストリップ状態。2ストローク750cc・4気筒のヤマハTZ750エンジンの上に、4本のチャンバーが取りまわされる大胆なレイアウトに注目! www.appeldephare.com

ELF Xのストリップ状態。2ストローク750cc・4気筒のヤマハTZ750エンジンの上に、4本のチャンバーが取りまわされる大胆なレイアウトに注目!

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画像: ELF e 1980-1983 ホンダとの協力関係が築かれたことにより、このELF e 以降のモト・エルフはホンダエンジンを採用するようになります。耐久選手権用に開発されたELF eは、鈴鹿8時間耐久にも参加し ました。1983年にレギュレーションが1,000ccから750ccへ変更されたことをうけて、エルフは次のステージである世界ロードレースGPに開発の場を移すことになりました。 www.elfmoto-lub.jp

ELF e 1980-1983
ホンダとの協力関係が築かれたことにより、このELF e 以降のモト・エルフはホンダエンジンを採用するようになります。耐久選手権用に開発されたELF eは、鈴鹿8時間耐久にも参加し ました。1983年にレギュレーションが1,000ccから750ccへ変更されたことをうけて、エルフは次のステージである世界ロードレースGPに開発の場を移すことになりました。

www.elfmoto-lub.jp
画像: ELF e のストリップ。4輪車のダブルウィッシュボーンを90度ひねったようなフロントの懸架方式がよくわかります。燃料タンクは車体底部にセット。エンジンはホンダRSCのRS1000用を搭載しています。 c2.staticflickr.com

ELF e のストリップ。4輪車のダブルウィッシュボーンを90度ひねったようなフロントの懸架方式がよくわかります。燃料タンクは車体底部にセット。エンジンはホンダRSCのRS1000用を搭載しています。

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画像: ELF 2 1984-1985 デ・コルタンツが開発した最後のエルフとなったモデルです。エンジンをストレスメンバーとする設計を押し進め、過去のモデルにあったエンジンプレートは完全に排除されたのが特徴です。紆余曲折を経て、結局グランプリの実戦には参加しないで後継機種にバトンを渡しています。 s-media-cache-ak0.pinimg.com

ELF 2 1984-1985
デ・コルタンツが開発した最後のエルフとなったモデルです。エンジンをストレスメンバーとする設計を押し進め、過去のモデルにあったエンジンプレートは完全に排除されたのが特徴です。紆余曲折を経て、結局グランプリの実戦には参加しないで後継機種にバトンを渡しています。

s-media-cache-ak0.pinimg.com
画像: 1984年、ELF2にまたがるホンダの創業者、本田宗一郎とデ・コルタンツ(左)。なお本田宗一郎は、ELF e が1983年の鈴鹿8耐に参戦した時も、チームのピットを訪問して興味深げにデ・コルタンツの作品を眺めていました。 http://www.classic-motorrad.de/v25/images/cm2014/2014-hockenheim-classics/André_de_Cortance_198

1984年、ELF2にまたがるホンダの創業者、本田宗一郎とデ・コルタンツ(左)。なお本田宗一郎は、ELF e が1983年の鈴鹿8耐に参戦した時も、チームのピットを訪問して興味深げにデ・コルタンツの作品を眺めていました。

http://www.classic-motorrad.de/v25/images/cm2014/2014-hockenheim-classics/André_de_Cortance_198

"ポスト・デ・コルタンツ"期のモト・エルフ

1985年 のフランスGPでデビューしたELF 2Aは、デ・コルタンツが開発したELF 2を改良したモデルで、前後のサスペンションなどに変更を受けていました。この後、セルジュ・ロゼとダン・トレマがモト・エルフの開発を担当することになります。トレマが設計した改良型、ELF 2Bはフロントツインスイングアームを踏襲しつつ、独立したフレームを採用したのが特徴でした (実戦投入せず)。そして1986年シーズン最終戦のイタリアGPの予選に出走したELF 2Cは、後継モデルのELF 3同様マクファーソン型フロントサスペンションを採用していました。

画像: ELF 3 1986 エンジンはワークスホンダNS500を採用。シーズンを通し、英国人ライダーのロン・ハスラムがポイントを獲得することに成功しています。 rodrigomattardotcom.files.wordpress.com

ELF 3 1986
エンジンはワークスホンダNS500を採用。シーズンを通し、英国人ライダーのロン・ハスラムがポイントを獲得することに成功しています。

rodrigomattardotcom.files.wordpress.com

ELF 3はいわば、デ・コルタンツがモト・エルフに描いた理想像をあえて放棄し、実戦でのリザルトを残すという実利を追い求めたモデルでした。ロゼとトレマが開発したモデルです。独立したフレームが与えられています。

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ELF R 1986
1983年にレースの場から退役したELF eをベースに開発された、速度記録挑戦車です。イタリア・ナルドサーキッ トで6つの分野の世界速度記録の更新に成功しました。

didierconstant.files.wordpress.com
画像: ELF 4 1987 ELF 3の一定の成功をベースに、エンジンを新たにワークスホンダNSR500を搭載。強力なエンジンパワーに車体をマッチさせることに苦労し、シーズン半ばからの実戦投入となりました(ELF 4の登場まで、ハスラムはELFカラーのホンダNSR500をグランプリで走らせました)。 4.bp.blogspot.com

ELF 4 1987
ELF 3の一定の成功をベースに、エンジンを新たにワークスホンダNSR500を搭載。強力なエンジンパワーに車体をマッチさせることに苦労し、シーズン半ばからの実戦投入となりました(ELF 4の登場まで、ハスラムはELFカラーのホンダNSR500をグランプリで走らせました)。

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画像: ELF 5 1988 モト・エルフ・プロジェクトの最終モデル。ワークスホンダNSR500エンジンを搭載。車重の軽減が大きな開発テーマであり、ふんだんにマグネシウム合金製パーツを採用していました。エンジンは1年型落ちでしたが、ハスラムが健闘し年間ランキング11位の座を獲得しました。 photos.bravenet.com

ELF 5 1988
モト・エルフ・プロジェクトの最終モデル。ワークスホンダNSR500エンジンを搭載。車重の軽減が大きな開発テーマであり、ふんだんにマグネシウム合金製パーツを採用していました。エンジンは1年型落ちでしたが、ハスラムが健闘し年間ランキング11位の座を獲得しました。

photos.bravenet.com

モト・エルフが残したもの・・・。

デ・コルタンツはレーシングカーデザイナーとして、ル・マン24時間やWRCで数々の実績を残しました。しかし、モト・エルフは2輪ロードレースの世界では成功をおさめた・・・とは言えないでしょう。後を継いだロゼとトレマの仕事は評価されるべきでしょうが、デ・コルタンツが描いた「新しいレーシング・モーターサイクルのシャシー」というイデアからは、乖離したものでした。

しかし、ホンダとのコラボレーションから生まれた片持ち式スイングアーム、「プロアーム」は多くのホンダ製量産モーターサイクルに採用されることになり、それら製品の商品性を高める役割を果たしました。また、素早いタイヤ交換がアドバンテージになる耐久レース用の、ホンダ製ファクトリーレーサーにも長年プロアームが採用されたことは周知のとおりです。

画像: ホンダ製量産スポーツモデルの、プロアーム採用モデルにつけられたプレート。ホンダとELFの名前が並んでいます。 cdn.snsimg.carview.co.jp

ホンダ製量産スポーツモデルの、プロアーム採用モデルにつけられたプレート。ホンダとELFの名前が並んでいます。

cdn.snsimg.carview.co.jp
画像: 1991年にピアッジオ傘下のジレラからデビューしたCX125(2ストローク単気筒125cc)に採用されているリアスイングアーム「モノアーム」もELFのパテントが使われていました。 2.bp.blogspot.com

1991年にピアッジオ傘下のジレラからデビューしたCX125(2ストローク単気筒125cc)に採用されているリアスイングアーム「モノアーム」もELFのパテントが使われていました。

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画像: ジレラCX125は、フロントに「モノチューボ」というユニークな片持ちテレスコピックフォークを採用していたのも特徴です(こちらはELF関係ないですけど・・・)。設計者はビモータでも活躍したフェデリコ・マルティーニです。 3.bp.blogspot.com

ジレラCX125は、フロントに「モノチューボ」というユニークな片持ちテレスコピックフォークを採用していたのも特徴です(こちらはELF関係ないですけど・・・)。設計者はビモータでも活躍したフェデリコ・マルティーニです。

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スポーツ・モーターサイクルシャシーの定番が、"テレスコピックフロントフォーク+アルミツインスパーフレーム+スイングアーム"となって久しいですが、そんな常識を覆すことにトライする挑戦者の登場に期待したいですね!

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