公道用量産モーターサイクルからモトGPマシンまで、現代のモーターサイクルに欠かせないテクノロジーになりつつあるのが、各種電子制御技術でしょう。モトGPマシンの場合、それは専ら速さという目的のために活用されますが、公道用量産モーターサイクルの場合は主に安全性の向上に主眼が置かれています。
世界最高峰のバイクメディアであるCYCLE WORLDの記事中で、ボッシュの2輪用電子制御技術のアレコレが紹介されてました。この分野のリーディングカンパニーであるボッシュの、最新テクノロジーのあれこれが詳細に解説されています。
先駆者、ボッシュの技術の数々をご覧ください。
ヒトと機械を結びつける技術 or ヒトと機械を乖離させる技術?
これらの技術は高度な電子制御技術により、制御の介在を乗り手に意識させずに機能するものが多いです。なかには、まるで自分のライディング技術が向上したと錯覚させるまでのものも・・・。電子制御の介在なんてまっぴらゴメンだよ、あたしゃ・・・という人も世の中には多く、毛嫌いする人が多いのも事実です。
ちなみにこの記事のタイトルは、映画『ブレードランナー』の原作にもなった古典SFの傑作、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』のパロディです。
題名は、一見すると奇妙な問いかけの形式がとられている。主人公は人造人間を処理していく中であまりに人間らしい人造人間と出会い、人間と人造人間の区別を次第に付けられなくなってゆく。人間とは何か? 人間と人工知能の違いは? 作品の根源的な思想を素朴な問いかけに集約した、主人公のこの一言が、そのまま本作品の題名となっている。
モーターサイクルの制御の主体は人間の技量と"安全マインド"なのは今も昔も変わりはないですが、電子制御技術の発展により「モーターサイクルを操作するということ」が、現代では問われるようになっている風に感じる人が増えているのでしょう。
EU、そして日本では、ABS、およびCBS(前後連動式ブレーキ)の装着義務化が順次新型車に導入されることがすでにアナウンスされています。英国のウェブ上の、とあるフォーラムでは「このEUの決定は、ボッシュのロビー活動による陰謀だ!」というような説を唱えるコメントがあったりしますけど(笑)。しかしボッシュ側の調査・主張のとおり、これら電子制御技術のおかげで交通事故が減少したのも歴とした事実なのでしょう。
2010年にはヨーロッパだけでも5,000人を超えるモーターサイクルライダーが交通事故で死亡していますが、ABSを装備するだけで、死亡や負傷につながるモーターサイクルの全事故の約1/4を防止できるという調査結果が出ており、新しいスタビリティコントロールによりさらなる防止効果が期待できます。
映画『ブレードランナー』で描かれた未来は、"人間のアイデンティティーが揺らいだ未来"で、いわゆる"ディストピア"(ユートピアの反義語)な世界でした。願わくば、モーターサイクルの電子制御技術の発展が、私たちのモーターサイクルライフに幸せをもたらさんことを・・・。