世界中の人間の心の呟きを聴くことができる不思議な力を持つ巨人と、児童養護施設で寂しさに耐えてきた10才の少女の友情と冒険を描くファンタジー。

心優しい巨人と不眠症の少女の心温まる友情物語

BHGとソフィー

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夜な夜なロンドンの街に現れて、人々にそっと夢を見させる仕事をしている一人の巨人BFG(ビッグ・フレンドリー・ジャイアント)。その巨人をうっかり目撃してしまったために巨人の国に連れ去られてしまう不眠症の少女ソフィー。
人々に夢を与えることを仕事にしている巨人BFGは、自分たちの存在を隠すためにソフィーをさらって自分の家に連れ帰るが、他の巨人がソフィーの存在に気づくと(なんと彼らは人間を食べるのである)、彼女を元いた施設に戻そうとする。しかしソフィーは、他の巨人たちにBFGがいじめられ、虐げられていることを放っておけず、BFGにある作戦を実行することを進言する。それは、人間の力を借りて、巨人たちと戦うことだった。
孤独な少女と心優しい巨人の友情を描いた、可愛らしいファンタジー。

不幸な環境から抜け出すことを夢見る少女のシンデレラストーリー。ただし恋バナはなし

本作のはじまりは、ピーターパン誕生を描いた「PAN ネバーランド、夢のはじまり」によく似ている。ロンドンの児童養護施設(はっきり書くと、孤児院)で育った不遇な環境の児童が不思議な存在に連れ去られて、人外の世界(ネバーランドと巨人の国)へとたどり着く。
時代設定は違うが(「PAN ネバーランド、夢のはじまり」は第二次世界大戦中だが、本作はほぼ現代)、こうして児童養護施設出身の児童を主人公にするということは、いまだにこうした施設が多くあるということかな、と思ったりした。

「PAN ネバーランド、夢のはじまり」では、主人公の少年が、自分の本当の素性を知るとともに、自分は捨てられたのではないし、母親から本当に愛されていたことを知って、ピーターパンとしてネバーランドで生きていくことを誓う。ある意味みにくいアヒルの子なのだが、本作では生まれや育ちは変わらないが、異形な者である巨人と心を通わせ、結果的に考えられもしなかった幸せを手にする。こちらはシンデレラに近いと言えるだろう。

二人の共通点は、孤独なこと。BFGは粗暴で野卑な仲間たちとは馴染めず、ソフィーは児童養護施設での冷たい仕打ちに心を閉ざしていた。二人はやがて友情を育むが、ソフィーの存在を嗅ぎつけた他の巨人たちが、彼女をとって食おうと探し始める。BFGはソフィーを逃そうとするが、ソフィーは立ち向かおうと考える。現状維持でよしとするBFGに対して、ソフィーは現状を変革しようと主張するのだ。

彼女の勇気がBFGの保守的な気分をも変えて、二人は奇想天外な計画に着手する。ストーリーは急展開して、え、まじですか?と目を丸くしたくなるような場面が訪れるのだが、それは見てのお楽しみ。

不幸な環境にあっても明るさとこまっしゃくれた雰囲気を失わずにいるソフィーの愛らしさと、恐ろしげなムードが全くない、まさしく邪気のない人の良さを全面に出すBFGの、文字通りの凸凹コンビの活躍を楽しめる、ディズニーらしい一作だ。


「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」予告編(ブルーレイ・DVD)

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