1949年からスタートした世界ロードレースGP(現MotoGP)ですが、最高峰(500ccおよびMotoGP)クラスで異なる3つのメーカーの車両で優勝した経験を持つライダーは、これまでの歴史のなかで5人しかいません。今年は4つの異なるメーカーの車両で最高峰クラス優勝・・・を達成できる可能性を持つライダーが参戦しますが、新記録を我々は見ることができるのでしょうか?

なお5人中2人は、最高峰クラス王者に輝いていますが・・・

「速いヤツは何に乗っても速い」という言い回しはモータースポーツの世界ではお馴染みですが、世界トップクラスの選手が集まるグランプリの最高峰クラスでは、マシンの変更が上手くいかずにかつてのチャンピオンが乗り換え後に優勝できずに終わるパターンもあったりします。

「何に乗っても速い」を頂点の世界で体現したライダー・・・GPの最高峰が500ccクラスだった時代、3つの異なるメーカーのマシンに乗って同クラスで勝利したライダーはこれまで5名います。一番最初にそれを成し遂げたのは、G.O.A.T=Greatest of all time(史上最高)のライダーとしてその名が上がることの多い英国のマイク ヘイルウッド(ノートン、MVアグスタ、ホンダで勝利)です。

そして続くのは、米国人ライダー全盛期の1980〜1990年代半ばに活躍した、エディ ローソン(ヤマハ、ホンダ、カジバ)とランディ マモラ(スズキ、ホンダ、ヤマハ)の両名。21世紀のMotoGP時代に入ってからはロリス カピロッシ(ヤマハ、ホンダ、ドゥカティ)が達成。最も新しい例は、スペイン人のマーベリック ビニャーレス(スズキ、ヤマハ、アプリリア)です。

日本の4メーカーが世界GPを席巻した1960年代に活躍したM.ヘイルウッド。プライベーター時代にノートン単気筒を駆り、1961年マン島TTセニアクラス(500cc)を制覇。MVアグスタのエースとして活躍した後、1965年最終戦よりホンダに加入。1966〜1967年には、MVのジャコモ アゴスティーニと熾烈なタイトル争いを繰り広げました。

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画像: 1983年にヤマハに加入したE.ローソンは、1984年、1986年、1988年に500ccクラスのタイトルを獲得。1989年はホンダに移籍し、4度目の王座につきます。GPキャリア晩年はカジバで参戦し、1992年に同ブランド初の優勝(ハンガリーGP)を成し遂げました。 global.yamaha-motor.com

1983年にヤマハに加入したE.ローソンは、1984年、1986年、1988年に500ccクラスのタイトルを獲得。1989年はホンダに移籍し、4度目の王座につきます。GPキャリア晩年はカジバで参戦し、1992年に同ブランド初の優勝(ハンガリーGP)を成し遂げました。

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レスリー グラハム(AJS、MVアグスタ)、レグ アームストロング(ノートン、ジレラ)、ジェフ デューク(ノートン、ジレラ)、ジョン ハートル(ノートン、ジレラ)、ウンベルト マセッティ(ジレラ、MVアグスタ)、ジャコモ アゴスティーニ(MVアグスタ、ヤマハ)、バリー シーン(スズキ、ヤマハ)、ジョン コシンスキー(ヤマハ、カジバ)、ダリル ビーティ(ホンダ、スズキ)、ルカ カダローラ(ヤマハ、ホンダ)、マックス ビアッジ(ホンダ、ヤマハ)、セテ ジベルノー(スズキ、ホンダ)、バレンティーノ ロッシ(ホンダ、ヤマハ)、ケーシー ストーナー(ドゥカティ、ホンダ)、アンドレア ドビツィオーゾ(ホンダ、ドゥカティ)、ホルヘ ロレンソ(ヤマハ、ドゥカティ)、ジャック ミラー(ホンダ、ドゥカティ)、アレックス リンス(スズキ、ホンダ)、マルク マルケス(ホンダ、ドゥカティ)と、2つの異なるメーカーのマシンに乗って最高峰クラスで勝利したライダーはそれなりに多く存在します。

画像: スズキ、ホンダ、ヤマハで最高峰勝利を記録したR.マモラ。500ccクラスのランキング最高位は2位を4度で、残念ながらタイトル獲得はできませんでしたが、2018年にMotoGPレジェンドとして表彰されました。 global.yamaha-motor.com

スズキ、ホンダ、ヤマハで最高峰勝利を記録したR.マモラ。500ccクラスのランキング最高位は2位を4度で、残念ながらタイトル獲得はできませんでしたが、2018年にMotoGPレジェンドとして表彰されました。

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しかし3つの異なるメーカーの車両・・・ということになると、扱うハードウェアとしてのバイクの特性、異なるチーム体制などの変化要因に対応できるライダーの数はぐっと絞られるようで、75年の歴史のなかでそれを成し遂げたのはわずか5人に絞られてしまいます。なお5人のうち、ヘイルウッドとローソンは最高峰クラスのタイトル獲得に成功していますが、マモラとカピロッシは成し遂げることができぬままGPキャリアを終え、唯一現役であるビニャーレスも現時点ではそれを成し得ておりません・・・。

大記録の達成は非常に難しいですが・・・実現を期待したいですね

2ストロークの125ccクラスで2011年にGPデビューしたビニャーレスは、2013年にMoto3王者に輝きました。2014年はMoto2に参戦し年間3位となりましたが、2015年には大抜擢で最高峰MotoGPに昇格(スズキ)。2016年には早くも、MotoGP初優勝を達成しています。

画像: 2016年、スズキGSX-RRを駆り、イギリスGPを勝利したM.ビニャーレス。 www.autoby.jp

2016年、スズキGSX-RRを駆り、イギリスGPを勝利したM.ビニャーレス。

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2017年はヤマハに移籍してV.ロッシのチームメイトとなったビニャーレスは、同年開幕戦のカタールGPで勝利。ヤマハに在籍した2021年シーズン途中までの間に、8つの勝ち星を積み上げています。そして2021年シーズン途中から移籍したアプリリアでは、昨2024年のアメリカズGPで勝利。これは20戦中19勝をドゥカティが記録した圧倒的なシーズンのなかで、唯一のドゥカティ勢以外の勝利として記録されることになりました。

画像: ポール トゥ ウィンで、ヤマハ移籍初戦のカタールGPで勝利したM.ビニャーレス。 www.autoby.jp

ポール トゥ ウィンで、ヤマハ移籍初戦のカタールGPで勝利したM.ビニャーレス。

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画像: レッドブルKTMテック3のライダーとして、2025年シーズンのMotoGPに参戦するM.ビニャーレス。 press.ktm.com

レッドブルKTMテック3のライダーとして、2025年シーズンのMotoGPに参戦するM.ビニャーレス。

press.ktm.com

4ストロークオンリーのMotoGP時代になってから・・・は、異なる3つのメーカーの車両で勝利を記録したのはビニャーレスが初となりますが、今シーズンのビニャーレスは全く新しい環境でKTM RC16を駆ることになります。ファクトリーチームではなく、サテライトチームでの参戦であることなど、4つの異なるメーカーの車両による勝利という大記録をビニャーレスが成し遂げるには、正直状況的には非常に厳しいことと思われます。

ただ下駄を履くまでわからないのが、モータースポーツの世界です。達成の暁には、まず破られることはないであろう大記録を今年見ることができることを・・・期待したいですね! なお現役のMotoGPライダーであるJ.ミラーとA.リンスは、3つの異なるメーカーの車両による勝利を記録した6人目のライダーとなる資格を有していますので、両名の奮闘にも注目したいです。

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