文:宮﨑健太郎 写真:小禄慎一郎/小渕良和 主催:公益法人東京都環境公社 クール・ネット東京(東京都地球温暖化防止活動推進センター)
実はZEVって、キャンプ向きの乗り物だったりするのです!?
キャンプ場への移動手段として、一番人気はやっぱり? クルマです
各種調査のデータによると、キャンプを楽しんでいる人たちがキャンプ場への移動手段として選択しているのは自家用車、レンタカー、カーシェアを含めた「クルマ」が84.9%!! *と圧倒的に多いそうです。
* 2022年4月、カーリースの定額カルモくん(ナイル株式会社)調べ
近頃は電車やバスなどの公共交通機関を使っても、アクセスしやすいキャンプ場が整備されてもいますが、それでもやはり移動の自由度、そしてキャンプ道具の積載能力がそれぞれ高いクルマが、キャンプ場に行く最良の方法と考える人が多いのは自然なことでしょう。
現在、その普及期が始まりつつあるEV(電気自動車)などのZEV(ゼロエミッション車、無公害車)ですが、2018年度の東京都における乗用車新車販売台数に占めるZEVの割合は1.6%という水準ですから、ZEVでキャンプを楽しもうという人は、存在するとしても極めてわずかな数と思われます。
エンジンが発する騒音の問題で、車中泊禁止の場所は増加中!?
しかし長い目で見てみると、ZEVでキャンプを楽しむことは将来の「定番」になる可能性は十分あります。東京都は2030年までに、都内乗用車の新車販売台数に占めるZEVの割合を50%にする目標を掲げていますので、シンプルに今後はZEVユーザー数が増加することが見込まれます。ZEVユーザーが増えれば、ZEVでキャンプを楽しむ人も増える・・・いわば自然増の現象です。
そして、そのような自然増の過程の中で、少なくない人はZEVでキャンプを楽しむことの「メリット」に気づくことになるでしょう。近年のキャンプ人気隆盛の「副産物」的な現象として、キャンプや車中泊の場でガソリンや軽油を燃料とするICEV(内燃機関搭載車)の騒音が問題視されるようになっているのです。
ICEVよりも静粛性に優れるZEVをキャンプの移動手段に使えば、クルマを電源として使用したり、エアコンなどを効かせていたとしても、騒音を発することはありませんので上述の問題をクリアすることが可能です。もちろん、もうひとつの問題・・・クルマの発する「光」が、夜間の大自然の雰囲気を壊すことになる「光害」については、ZEVもICEVと変わることなく注意しなければいけません。キャンプに限ったことではなく、何事も「マナー」は大事です。
ZEVを"電源"として使用することで、キャンプの楽しみ方が広がります
そもそもZEVは運転中に大気汚染をすることなく、地球的な課題である温暖化対策に寄与する乗り物として認識されていますが、災害時などで非常電源として活用できることも大きな利点にあげることができます。その一例をあげると、代表的な国産EVである日産リーフe+であれば、一般家庭での一日あたりの使用電力量を約12kWh/日とした試算値(変換機効率含まず)で約4日間分の電力をまかなうことが可能です。
なお初代トヨタMIRAIは、AC100V-1,500Wのコンセントを車載しているので、オーブントースター(1.2kW)、炊飯器(一升炊き、1.35kW)、IH調理器(1.3kW)などの器具を使っての調理も可能です。EVの給電の場合でも電気製品を使ったことによる電費によって、航続距離が少なくなることにシビアになる必要はないでしょう。そして充填時間がEV満充電に要する時間よりはるかに短く、フル充填時の航続距離が600kmを超えるトヨタMIRAIのような水素FCVであれば、キャンプ活用時の電費についてはほぼ無視しても大丈夫といえます。
キャンプ愛好家たちは総じて自然を愛する人たちでしょうが、そのなかにはICEVを使うことによって大気を汚し、地球温暖化の流れに結果的に加担することを心苦しく思う人もいると思います。そんな人たちにとってはZEVが普及して、ZEVでキャンプを楽しむことが当たり前の時代とは、諸手を挙げて歓迎した未来に他ならないでしょう。