近年、世界の先進国では短距離移動の電動モビリティとしてEスクーター(キックボード型スクーター)が人々の注目を集めています。しかし、既存の交通環境を構成する要素・・・クルマ、バイク、自転車、歩行者などに、新たな要素としてEスクーターが加わったことから、生じた"軋轢"があるのも事実です・・・。日本での普及が 今後進むであろうEスクーターにまつわる、最近の動向を紹介したいと思います。

日本でも規制緩和により、"原付"扱いから外れるかもしれません・・・?

昨年4月から今年の7月(予定)まで、警視庁は"特例電動キックボードの実証実験の実施"を都内の指定区域で行っています。現在行われているこの都内の実証実験は、2020年10月〜の最初の実証実験に次ぐ2回目の試みであり、これら実証実験をとおして、現在はICE(内燃機関)車の原付一種と同じルールが適用されている電動キックボード型スクーター(定格出力600W以下)を、免許不要、ヘルメット着用義務廃止など"規制緩和"して普及させることを行政は考えています。

昨年末に電動キックボード型スクーターの規制緩和の報道が注目され、藪から棒なハナシとしてこの規制緩和の話題を受け止めた方も多いみたいですが、この規制緩和については数年前から経産省、国家公安委員会、国土交通省などが取り組んでいたのです。

画像: 警察庁が公開している資料・・・「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会 中間報告書概要(新たな交通ルールと今後の主な検討課題)」より。既存の"原付枠"は残しつつ、新たに最高速15km/hまでの"小型低速車"という枠を創設し、そこに電動キックボード型スクーターなどを当てはめる方向で検討していることがわかります。 www.npa.go.jp

警察庁が公開している資料・・・「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会 中間報告書概要(新たな交通ルールと今後の主な検討課題)」より。既存の"原付枠"は残しつつ、新たに最高速15km/hまでの"小型低速車"という枠を創設し、そこに電動キックボード型スクーターなどを当てはめる方向で検討していることがわかります。

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画像: 同資料の海外制度調査の項。昨年末の報道では、警察庁は「16歳以上」「ヘルメット着用は任意」「最高速度20km/h」「最高速度6km/hに制御可能で、それがわかる表示機能があれば歩道走行可」という方針を固めたとされており、2022年通常国会に道路交通法の改正案が提出される見込み・・・とのことです。 www.npa.go.jp

同資料の海外制度調査の項。昨年末の報道では、警察庁は「16歳以上」「ヘルメット着用は任意」「最高速度20km/h」「最高速度6km/hに制御可能で、それがわかる表示機能があれば歩道走行可」という方針を固めたとされており、2022年通常国会に道路交通法の改正案が提出される見込み・・・とのことです。

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制度設計については、電動キックボード型スクーターの普及・制度化に関して先行している諸外国の状況も参考にされていますが、交通事情の"お国柄"というのは様々なものですから、どこかの国の制度をまんまフルコピーして日本で使うというのは難しいでしょう・・・。日本の実情に合った、安全で合理的な制度が考案されることを期待したいです。

短距離の移動にチョー便利で効率的!!・・・なのは間違いないでしょう

この記事では"電動キックボード型スクーター"と長ったらしい表記を使っていますが、すでに本格的な普及が進んでいる諸外国では「Eスクーター」という呼び方が定着しています。その形態は様々で、人力で進む立ち乗りのキックボードと同形態のものもあれば、快適性などを高める目的で着座するためサドルを備える例などもあります。

画像: 英国および欧州、そしてアラビア半島の18カ国でサービスをEスクーターなどのシェアリングサービスを展開しているティアーの製品。私たち日本人に馴染みのある「スクーター」という言葉は、海外の電動車業界ではこの手のキックボード型に使われることが主です(日本でスクーターと呼ばれる原付的乗り物は、電動の場合Eモペッドと呼んで区分するのが一般的です)。 about.tier.app

英国および欧州、そしてアラビア半島の18カ国でサービスをEスクーターなどのシェアリングサービスを展開しているティアーの製品。私たち日本人に馴染みのある「スクーター」という言葉は、海外の電動車業界ではこの手のキックボード型に使われることが主です(日本でスクーターと呼ばれる原付的乗り物は、電動の場合Eモペッドと呼んで区分するのが一般的です)。

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アメリカでは2018年ころから、ライムやバードといった振興企業によるEスクーターのシェアリングサービスが急成長。英BBCはその報道の中で、米国内の移動の8割は8km未満で、そういった短距離移動の「足」にEスクーターが適していることが、爆発的な普及の理由と解説しています。

昨年度、英ロンドンではEスクーターの事故が急速に増加しました・・・

しかし、これらEスクーターによる交通事故などの増加には、世界各国の行政組織が頭を痛めているようです・・・。

BBCの1月7日の報道によると、昨年度上半期(1〜6月)に発生した英ロンドンのEスクーター衝突事故は258件で、2020年度全体(266件)とほとんど同数!! を記録したとのこと。また、2019年は38件、2018年はわずか9件と、普及に進むにつれ事故件数が増加しているかがわかります。

ちなみに英国では個人所有のEスクーターの公道・公有地での使用を禁じており、昨年は違反した個人所有のEスクーター3,600台以上を押収したとのこと! なおロンドンでは昨年6月から一部地域でのレンタル制度を導入。このトライアル・・・実証実験をとおし、安全なEスクーターの運用方法を検討していく方針を打ち出しています。

画像: 英ロンドン一部地域でのEスクーターレンタル制度は、ドット(写真)、ライム、ティアーの3社が運営しています。このトライアルはTfL(ロンドン交通局)、ロンドン市議会、ロンドン自治体、英国政府によって計画されたものであり、より環境に優しい、新しい交通手段の利用を可能にするための幅広い取り組みのひとつです。 ridedott.com

英ロンドン一部地域でのEスクーターレンタル制度は、ドット(写真)、ライム、ティアーの3社が運営しています。このトライアルはTfL(ロンドン交通局)、ロンドン市議会、ロンドン自治体、英国政府によって計画されたものであり、より環境に優しい、新しい交通手段の利用を可能にするための幅広い取り組みのひとつです。

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また昨年12月にTfL(ロンドン交通局)は、EスクーターおよびEユニサイクル(一輪車)の電車やバスなど公共交通への持ち込みを禁止することを発表しました。これは不良バッテリーに起因する火災事故が過去数件発生し、公共交通内という閉鎖空間でバッテリー火災による有毒な煙が発生することは非常に危険、という判断によるものです。

この公共交通への持ち込み禁止措置は、上述のレンタル制度に承認されている3メーカーの製品にも適応されるとのことです。なお違反者に対する罰金は、最大1,000ポンド≒15万4,930円というかな〜り厳しい内容になっています。

BBCの報道では、英運輸省(DfT)の統計によると英全土で起きたEスクーターの衝突事故による負傷者931人のうち、その半数以上の数が首都圏で発生した事案だったそうです。他国の統計を調べたわけではありませんが、都市部で集中して多くの事故が起きる現象は傾向は英国に限らず、世界の先進国で共通のことと思われます。

日本も今後、いろいろとモメそうな気がしますけど・・・

法改正が今後行われると、日本も都市部を中心に本格的なEスクーターの普及期に入ることになることが予想されます。今現在、一部の心無いユーザーによる傍若無人なルール違反走行により、路上の「問題児」扱いされることが多いEスクーターですが、近い将来法改正により「小型低速車」枠が創設されたとしたら、そのことを機に「Eスクーターに関するすべての日本居住者対象の交通教育充実」と、「ハード面およびソフト面の安全かつ便利な運用」方法が定着することを望みたいです。

画像: 1月28日、UCL(ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン)のPEARL(パーソン環境活動研究所)は、ロンドンのEスクーターレンタル制度のプロバイダであるティアー(写真)、ライム、ドットとともに、レンタルEスクーターのユニバーサルサウンド(歩行者やその他に対する接近警告音)業界標準規格化のための研究開発をすることを公表しています。 about.tier.app

1月28日、UCL(ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン)のPEARL(パーソン環境活動研究所)は、ロンドンのEスクーターレンタル制度のプロバイダであるティアー(写真)、ライム、ドットとともに、レンタルEスクーターのユニバーサルサウンド(歩行者やその他に対する接近警告音)業界標準規格化のための研究開発をすることを公表しています。

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今後の日本の法改正に関して誰もが一番危惧してしまうのは、性急にことを進めてしまうことでしょう。すでにEスクーター普及が進んでいる主要先進国でも、英国の例などのとおり、まだまだどのようにEスクーターと付き合っていくのか試行錯誤中なのが現実です・・・。安全を最低限担保できない限りは、法改正前に各種実証実験を何度でも繰り返すくらいの慎重さを求めたいです。

報道の見込みどおり、今月から行われている通常国会で改正法案が提出されるとしたら・・・その審議内容などについて改めてお伝えしたいと思います。

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