英国2輪産業の聖地だったコベントリーにあるウォーリック大学の学生主導プロジェクトである「ウォーリック・モト」は、マン島TTのTTゼロ(ゼロエミッション車によるTTレース)に参戦することを最終目的にしています。そしてウォーリック・モトは、メーカーとしての活動を再開したノートンの協力を得たことを先日公表しました。

TT参戦経験豊富なノートン製シャシーと、学生たちの研究が合体!

ウォーリック大学の学生13名で構成された「ウォーリック・モト」は、大学内のさまざまな分野の博士号取得者や学者、そしてエンジニアや研究者のサポートを得たプロジェクトです。最先端の電動バイクを作るために生まれた同プロジェクトは、それまでホンダ・ファイアーブレードのシャシーをベースに開発を進めていましたが、2020年10月からはノートン製シャシーにスイッチし、初の作品を完成させました。

画像: ウォーリック・モト初の電動ロードレーサー「フロンティア」とその関係者たち。(左から)ロバート・ドライバー(バッテリー試験・特性評価エンジニア)、デビッド・クーパー(WMGプレシジョン・エンジニア)、デイヴ・グリーンウッド教授(WMG高付加価値製造カタパルトCEO)、トム・ウィーデン(ライダー)、リー・ローズ・ジョーダン(WMG学生プロジェクト・プロジェクト・マネージャー)、マルコム・スウェイン(WMGリード・エンジニア)、マーティン・ネチャイ(ノートン・モーターサイクルズのチーフ・シャシー・エンジニア)、ジェームス・グローマン(学生)、アマン・スラーナ(学生、ウォーリック・モトのチーフ・エンジニア)。©️Norton Motorcycles warwick.ac.uk

ウォーリック・モト初の電動ロードレーサー「フロンティア」とその関係者たち。(左から)ロバート・ドライバー(バッテリー試験・特性評価エンジニア)、デビッド・クーパー(WMGプレシジョン・エンジニア)、デイヴ・グリーンウッド教授(WMG高付加価値製造カタパルトCEO)、トム・ウィーデン(ライダー)、リー・ローズ・ジョーダン(WMG学生プロジェクト・プロジェクト・マネージャー)、マルコム・スウェイン(WMGリード・エンジニア)、マーティン・ネチャイ(ノートン・モーターサイクルズのチーフ・シャシー・エンジニア)、ジェームス・グローマン(学生)、アマン・スラーナ(学生、ウォーリック・モトのチーフ・エンジニア)。©️Norton Motorcycles

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「フロンティア」に搭載されるのは160kW/201bhpの出力と400Nmのトルクを持つ特別開発の電動パワートレインで、加速・速度特性は、ICE(内燃機関)換算で900ccから1,000cc程度。バッテリーは学生たちが設計・テストした液浸冷却式を採用しています。

16kWhの容量を持つこのバッテリーは、徹底した熱管理戦略を適用することで長持ちするように設計されるとともに、競技車用に必要な短時間での大きなパワーピークにも対応。また、この冷却システムはレースやテストの前に、サーキットの要求に応じて誘電体液の開始温度を最適化することで、より効率的な温度範囲での運用を可能にしています。

さらにこのバッテリーは、一般的なCHAdeMO(チャデモ)コネクターで充電可能で、急速充電が可能な場所では約1時間でフル充電することができます(32分で空の状態から最大80%まで充電可能)。研究チームは充電時間の短縮により、サーキットでの走行時間可能を最大限に延ばすことができ、サーキットサイドでの開発や最適化を進めることができると説明しています。

そもそも2020〜2021年の「モラトリアム」が設定されていたTTゼロですが?

「フロンティア」のバッテリーケースは、ウォーリック大学で開発されたレーザー溶接技術を用いて製作されており、量産化を考慮した設計にもなっています。明言はされていませんが、ノートンのシャシー関連技術提供は、将来的なノートンのEV市場参入のサーベイも兼ねているのかもしれないですね・・・?

ともあれフロンティアは、学生たちの学位取得のための勉強と並行しての作業ながらもわずか7ヶ月で完成! 開発ライダーをつとめるトム・ウィーデンは、2016年マンクスGPセニアクラス優勝などを含む優れたキャリアの持ち主ですから、ウォーリック大学のTTゼロ挑戦の結果が楽しみですね!!

・・・ところで気になるのは、2022年から再開する予定の世界最高峰のリアル・ロードレーシング(公道を使ったロードレース)のマン島TTですが、TTゼロクラスも開催されるのか・・・です。

既報のとおり、2010年から始まったTTゼロは、無限の「神電」シリーズの活躍が日本でも知られていますが、技術的な参入のハードルの高さから参加台数が増えないことが、主催者の大きな悩みでした。そのため主催者側は、2020〜2021年にはTTゼロを開催せず、2年間の「モラトリアム」期間の内に新たな参戦をうながすことを決定しました。

しかし・・・COVID-19パンデミックによってTTゼロ云々以前に、マン島TT自体は中止に追い込まれてしまいました。そのため2022年度の「再開」ではTTゼロはどういう扱いになるのかが気になりましたが、現状で告知されている2022年のスケジュールにはTTゼロは入っていませんでした。

COVID-19パンデミックは企業だけでなく、研究期間や学校の活動にも大きな停滞をもたらしました。そのため、TTゼロの「モラトリアム」も継続となったわけですね。多くのメーカーやスタートアップが2輪EVに熱い視線を注ぐなか、世界最高峰リアル・ロードレーシング・イベントのマン島TTで、TTゼロが2022年度も開催されないのはちょっと残念です・・・。ウォーリック大学とノートンのコラボ作であるフロンティアの、活躍する姿をTTで観ることができる日が、早く訪れることを期待したいですね!

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