クラウディオ・カスティリオーニの死後、カジバのCEOとして活躍したジョバンニ・カスティリオーニが作った会社「C-クリエイティブ」が、オーストラリアの「ステルス・エレクトリック・バイク」とパートナーシップを結びました。そしてステルス社は、2022年に新たな電動バイク2種類を生産することを予告しています・・・。

カスティリオーニ時代のMVアグスタの終焉・・・

2011年夏にクラウディオ・カスティリオーニが亡くなったため、MVアグスタブランドを保有するカジバの総帥の座は、クラウディオの息子であるジョバンニに継承されました。そして副代表の座には、ドゥカティのエンジニアとして活躍したマッシモ・ボルディが就くことになりました。

ジョバンニがリーダーの時代のMVアグスタは、F3シリーズなどの3気筒モデルのバリエーション展開や、2014年からの「MVアグスタ・リパルト・コルサ」による世界スーパーバイク/スーパースポーツ選手権のロードレース活動復帰などで注目を集めましたが、財政的に苦しい時期が続いたために、2016年秋にカスティリオーニ家はロシアのサルダロフ兄弟率いるブラック・オーシャン・グループの投資を受け入れることになります・・・。

2018年、MVアグスタはフォワード・レーシングと組んで、2019年からMoto2に参戦することを公表しました。左がジョバンニ・クザリで、右がMVアグスタCEOのジョバンニ・カスティリオーニです。

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2018年暮れに、MVアグスタはサルダロフ兄弟からさらなる資本増強を受け、その結果ティムール・サルダロフが新しいMVアグスタのCEOとなりました。2019年秋にはサルダロフ兄弟がMVアグスタの資本の100%を管理するようになり、彼らの指導の下でMVアグスタは年産25,000台到達を目標とする5ヵ年計画や、中国のロンシンと協力しての中間排気量2気筒モデル開発などを公表しています(現在はベネリを所有する、銭江グループと提携)。

サルダロフ兄弟は彼らの計画を実現するために、2015年から2018年の間、農機具生産の多国籍企業「マスキオ・ガスパルト」常務を勤めていたマッシモ・ボルディをMVアグスタに呼び戻しています。そしてジョバンニは相談役となりましたが、ある意味この人事はカスティリオーニ家が主役だった1978年からのカジバ〜MVアグスタの歴史に、ひとつの区切りがおとずれたことを示しています。

イタリアのデザインと、オーストラリアの技術が融合!?

今年のはじめ、ジョバンニはC-クリエイティブという新会社を設立しています。国際的な投資家の支援を受けるこのデザイン企業の誕生には、MVアグスタと縁の深いもうひとりの人物が関わっています。

それは、2020年までMVアグスタ・CRCのデザインディレクターを務めていたエイドリアン・モートンです。長年イタリアンモーターサイクルデザインの分野で活躍したモートンは、MVアグスタではF3、ブルターレ、ツーリスモベローチェ、RVS#1、リヴァーレ、スーパーベローチェ、ラッシュなどを、そしてベネリではトルネードとTnTを生み出した人物です。

モートンは共同創設者としてC-クリエイティブを設立し、CEO兼デザインディレクターに就任しています。

画像: Adrian Morton Interview - The true DNA of MV Agusta youtu.be

Adrian Morton Interview - The true DNA of MV Agusta

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エイドリアン・モートン
「最も有名なブランドのモーターサイクルを30年間設計した後、私はこの起業家的な一歩を踏み出したいと思いました。そして、私の経験を業界内外の幅広いクライアントに提供します。 友人のジョバンニ・カスティリオーニと一緒に、明るい未来に向けて自信と熱意を持って取り組んでいます。」

カジバ・MVアグスタ時代に強固な関係を築いたジョバンニ・カスティリオーニとエイドリアン・モートンが生み出したC-クリエイティブが、この度パートナーシップを結んだオーストラリアのステルス・エレクトリック・バイクは、10年以上E-モビリティのエンジニアとして活躍したジョン・カランバリスが2008年に設立したハイテク企業です。

画像: ステルス社のトップモデル、B-52。航続距離は100kmで、最高速は80km/hをマークします。 stealthelectricbikes.com

ステルス社のトップモデル、B-52。航続距離は100kmで、最高速は80km/hをマークします。

stealthelectricbikes.com

ステルス社はいわゆる電動MTBタイプのe-モビリティを製造販売していますが、C-クリエイティブが大株主として参画したことにより、新たに野心的な成長計画を発表することになりました。2022年には、革新的な電動シティバイクと電動デュアルパーパスバイクの2モデルの生産を開始するとステルス社は予告していますが、非常に気になるのはそれら2モデルはいずれも、エイドリアン・モートンがデザインしたもの・・・という点です。

画像: 2018年のEICMA「最も美しいモーターサイクル」を受賞したMVアグスタ・ブルターレ・セリエ・オロ。A.モートンがデザインした作品は、2012年(リヴァーレ)、2010年(F3 800)も同賞を受賞しています。 www.mv-agusta.jp

2018年のEICMA「最も美しいモーターサイクル」を受賞したMVアグスタ・ブルターレ・セリエ・オロ。A.モートンがデザインした作品は、2012年(リヴァーレ)、2010年(F3 800)も同賞を受賞しています。

www.mv-agusta.jp

ジョン・カラバリス(ステルス・エレクトリック・バイクCEO)
「これはステルス社の将来にとって重要な瞬間であり、このような経験豊富なチームと手を組むことができたことに興奮しています。市場での新たな展開により私たちは視野を広げ、世界中のレクリエーションやモビリティ分野の未来を形作ることになりました。私たちは業界のエンジニアリングとデザインの基準となり、技術的進歩のための新しいベンチマークを設定していきます」

ジョバンニ・カスティリオーニ(C-クリエイティブ創業者)
「私は数年前からステルスを愛用していますが、e-バイクのシーンでこれほどエキサイティングなものはありませんでした。ステルスは独特の魅力とカリスマ性を持ったブランドであり、C-クリエイティブチームは2輪の世界における数十年の経験を、同社にもたらすことができることに興奮しています」

2022年登場予定の2モデルが、従来のステルス社の製品同様の電動MTB的製品なのか、それとも本格電動モーターサイクルなのかは現時点では定かではないですが、ともあれ、最も美しいモーターサイクルデザインを生み出す男のひとりであるA.モートンの作品ですから、その仕上がりに期待してしまいます。そのスタイリングを、早く見てみたいですね!

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