10年間、様々なトピックを提供してくれたTTゼロですが・・・
2010年にマン島TTの新クラスとして始まったTTゼロは、電動バイクを使って戦う環境に優しいTTレースとしてこれまで発展していきました。2012年にはモトシズがゼロエミッション車初となるオーバーザトン(平均時速100マイル超え)を達成。日本の無限「神電」による連覇記録とラップ記録の更新。そして教育機関であるノッティンガム大学による、時速120マイル超えラップ達成など、10年のTTゼロの歴史のなかで、いろいろな伸展を見ることができました。
次世代交通の動力源として電気モーターに注目が集まる昨今ですので、TTゼロにはまだまだ発展の余地があるはずです。しかし、TTを主催するマン島政府は2年間TTゼロを開催しないことを決めたのです・・・。
エントリー台数の少なさを、解消することを期待しての措置
マン島政府の観光とモータースポーツの責任者であるロブ・カリスター企業省大臣は「マン島としてはTTゼロクラス、そしてクリーンテクノロジー産業に関わるすべての人をやる気にさせることに、コミットし続けていきます。一部のメーカーや個々のレースチーム、そして大学チームたちがこれまでのTTゼロ参戦で達成した最先端の車両開発に、ほかの2輪業界が追いつくことができるように・・・これが我々がTTゼロを一時停止することにした意図なのです」と語っています。
先述のとおり10年間で様々な伸展があったTTゼロですが、この10年間常にTTゼロの問題点にあげられてきたのは「エントリー台数の少なさ」でした。直近の2019年度はエントリー台数9台で完走7台・・・。そして初年度2010年から順に2018年まで、9台、5台、4台、10台、9台、9台、11台、9台、12台と、お世辞にもエントリー台数が多いクラス、とは言えない状況が続いています。
カリスター大臣の言うとおり、無限のようなメーカー、そして各レースチームや大学チームは今までTTゼロに長年関わった経験の蓄積がありますが、これからTTゼロに新規参入しようとする集団は言うまでもなく「経験ゼロ」です。2年間TTゼロを休止することで開発のスピードを抑制し、既存参加者と新規参加者の「ギャップ」を少なくする・・・。新規参入をしやすくして、TTゼロのエントリー台数を増やしたい、TTゼロに関わるメーカーや業界を増やしたい、というのが今回の措置の意図なのです。
果たしてこの意図が、生き馬の目を抜くモータースポーツの世界でフェアな措置なのかどうか・・・は議論の余地がありますが、結果として期待したような効果があって、2022年に再開するTTゼロのエントリー台数が増えることになれば、それは喜ばしいことに他ならないでしょう。
なお、これから既存参戦チームやクリーンテクノロジー業界などを交えての、TTゼロの今後についての話し合いが行われるということを企業省は述べていますが、2年間の休止措置に反発して離脱するチームがないといいですね・・・。将来どのような方向性でTTゼロが再開されることになるのか・・・動向を見守りたいです。