ロングストロークらしくジェントルなZ4
さて、今回のメインテーマであるパワートレーン、2L直列4気筒ターボのフィーリングについては、果たしてどんな違いを感じ取ることができたのだろう。
Z4に搭載されている4気筒エンジンは、1998ccの排気量を持ったいわゆる「モジュラー」エンジンである。2013年に導入され、3気筒のB37や6気筒のB58と共通のシリンダーピッチを 持っている。ボア/ストロークは82.0×94.6mmのロングストロークタイプで、258ps、400Nmを発揮する。
8速オートマチックと組み合わせたフィーリングは、優雅なロードスターに似合うジェントルなものだ。もちろんスポーツモードを選択すればレブリミット付近までスムーズかつ素早く吹け上がり、メリハリのあるダイナミックな走りを楽しませてくれる。あるいはステアリング部のパドルシフトを使って、積極的にコントロールするのも楽しい。
扱いやすさを増したK 20C。長距離ランもストレスフリー
一方、320ps、400Nmを発揮するタイプRのK20Cは、先代タイプRから受け継いだもの。最高出力は上乗せされているが、いかにもショートストロークらしかった先代に比べて、ずいぶんコンフォート方向へと振っているように感じられた。おそらくシャシセッティングに合わせて見直したのだと思われるが、フィール的にはより扱いやすさが増しており、ポジティブに感じられた。
たとえば通勤などで乗り回す時には、3速あるいは4速、それともいきなり6速に入れたとしても、不自然さを感じさせることはない。ストレスフリーにクルージングが続けられる。ただしシフトのストロークは長めで、スポーツモデルとしてはちっと興ざめだ。
さらにシフトダウン時に介入してくるレブマッチングシステムは賢いソフトウエ アのおかげでうまく働いてはくれるが、ヒール&トゥに慣れた私のような「絶滅種に近い世代」には、やはりちょっと余計なお世話だと思ってしまう。
もっとも、より若い世代でマニュアルシフトに乗りたいけれど、できるだけラクをしたいというドライバーには、魅力的なシステムであることは認めよう。
もうひとつ困ったのが、ステンレス製のシフトノブにこだわっていること。外気温が摂氏34度に達 した取材日には、しばらく日向に置いておくと火傷しそうなほどの熱さになってしまった。
4気筒ユニットの楽しさをそれぞれに追求した2台
とはいえ、どちらの4気筒も、ともに満足できるパフォーマンスと洗練性を持っていた。さすがは世界でも屈指の「エンジンスペシャリスト」として名を馳せているメーカーたちの製品であることを、しっかり納得させられた。
また、ロードスターと4ドアセダンという、全く異なるディメンションを持ちながら、この2台に
は「走る」「曲がる」、そして「止まる」という、ドライビングを楽しませるための自動車としての基本的な要素が、しっかり“標準装備”されていたことを改めて高く評価したい。
ホンダ シビック タイプR 主要諸元
●エンジン:種類=直4DOHCターボ/総排気量=1996cc/ボア×ストローク=86.0×85.9mm/圧縮比=9.8/最高出力=228kW(306ps)/5600rpm/最大トルク=400Nm/2500-4500rpm/燃料・タンク容量=プレミアム・57L/燃費(EU 複合)=15.2km/L/CO2排出量=151g/km●ディメンジョン&ウェイト:全長×全幅×全高=4560×1875×1435mm/ホイールベース=2700mm/トレッド前/後 =1600/1595mm/車両重量=1390kg●シャシ:駆動方式=FF/トランスミッション=6速MT/ステアリング形式=ラック&ピニオン/サスペンション形式=前ストラット・後マルチリンク/ブレーキ=4輪Vディスク/タイヤサイズ=245/30ZR20
BMW Z4 sDrive 30i 主要諸元
●エンジン:種類=直4DOHCツインターボ/総排気量=1998cc/ボア×ストローク=82.0×94.6mm/圧縮比=10.2/最高出力=190kW(258ps)/5000-6500rpm/最大トルク=400Nm/1550-4400rpm/燃料・タンク容量=プレミアム・52L/燃費(EU複合)=16.4-16.7km/L/CO2排出量=139-137g/km●ディメンジョン&ウェイト:全長×全幅×全高=4324×1864×1304mm/ホイールベース=2470mm/トレッド前/後=1609/1616mm/車両重=1415kg/ラゲッジルーム容量=281L●シャシ:駆動方式=FR/トランスミッション=8速DCT/ステアリング形式=ラック&ピニオン/サスペンション形式=前ストラット・後5リンク/ブレーキ=4輪Vディスク/タイヤサイズ=前225/50R17・後255/45R17