WBA・WBO世界ライト級王者ワシル・ロマチェンコ(31=ウクライナ)の防衛戦。相手は、元WBA同級王者アンソニー・クロラ(32=イギリス)。
身長・リーチともに勝るクロラがどんなロマチェンコ対策を施してくるかが注目だったが、結果はロマチェンコの4ラウンド58秒でノックアウト。

パウンド・フォー・パウンドのトップに君臨するワシル・ロマチェンコに階級の壁が立ちふさがる?

ハイテクと称されるほど、完成されたテクニックを誇るロマチェンコ。右へ左へと小刻みに動きながら、決して相手の正面に立たず、相手が見えない角度から正確なパンチを繰り出す。
ハンドスピードもさることながら、右へ左へと変幻自在にポジションを変えるサイドステップは、ボクシング史上最高傑作の評価に相応しい。

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そのロマチェンコに挑戦するのは、元WBA世界ライト級チャンピオンのアンソニー・クロラ。スキルや実績においては、2008年の北京五輪(フェザー級)・2012年ロンドン五輪(ライト級)を連覇して、二度の金メダルを獲得したほどの最高のアマチュア戦績をひっさげてプロ入りし、13戦中 実に12戦が世界タイトルマッチというロマチェンコがクロラを圧倒するが、クロラに勝ち目がないかというとそうとも言い切れない。

174cmのスリムな体格はナチュラルボーン(産まれながら)のライト級。“格”においてはロマチェンコに劣るものの“体格”においては、ライト級としては小柄なロマチェンコに勝る。その体格差を生かした戦い方ができれば、クロラにも勝機はあるのでは、ということだ。

(ちなみに、ロマチェンコもかなりのイケメンだが、クロラも顔面偏差値では負けていない、端正な顔立ちをしている)

実際、フェザー級からスーパー・フェザー、ライト級と階級を上げてきた(そしてその3階級を制覇してきた)ロマチェンコにして、ライト級に上げてからはそのハイテクぶりに陰りが生じているという見方が強いのだ。2018年5月に当時のWBA世界ライト級チャンプのホルヘ・リナレスと戦った時は、確かに10RKO勝ちを収めたものの、プロ初のダウンを喫した上、右肩を負傷するというアクシデントに見舞われた。
前回2018年12月に行なったホセ・ペドラサとのWBA・WBO世界ライト級統一戦では、試合内容では圧倒しながらも倒しきれずに終わった。強いことは強いが、S・フェザー級までの無敵ぶりと比べると物足りない、天才ロマチェンコにしてもやはり階級の壁に阻まれているのではないか?という疑念が湧いているのである。

ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)vsアンソニー・クロラ
ハイテクニックネームミリオン・ダラー
1988年2月17日生年月日1986年11月16日
13戦12勝(9KO)1敗プロ戦績43戦34勝(13KO)6敗3分
170cm/166cm体格174cm/170cm
左ボクサーファイタースタイル右ボクサーファイター
参考:WOWOW /https://www.wowow.co.jp/sports/excite/info/detail_190405.html

試合展開

さて、ロマチェンコ優位とみる下馬評の中で、体格差を活かせば・・という淡い期待を寄せられることになったクロラは、実際どんな戦い方をしたか。

サウスポーのロマチェンコに対して、右構えのクロラ。第1ラウンドはともにあまり手を出さずに様子見の展開ながら、プレッシャーをかけるのはロマチェンコ。ジャブを飛ばしながらクロラを追い込む。

クロラのボディーブローには定評があるが、ロマチェンコには上下に綺麗にパンチを出し分ける巧さがあり、少なくとも第1ラウンドから第2ラウンドでは、ロマチェンコが余裕でポイントを重ねている印象だ。

クロラはあまりジャブを打たず、ガードを固めてロマチェンコが繰り出すパンチの合間に反撃を試みるが、あまり当たらない。というより、回転数が上がり始めたロマチェンコのフットワークとコンビネーションについていけていない感じだ。

クロラは体格を利して乱戦に持ち込むべきだと思うが、身長こそ勝るもののロマチェンコの方が下肢の太さでは上で、パワー的には優位とは言えないのかもしれない。また、強打を思い切って振るう乱打戦を行うには、クロラのボクシングは綺麗すぎるのかもしれない。
結果として、自在にリングを動き回るロマチェンコの巧緻な速攻の前にクロラはなすすべがない。第3ラウンドにはロープに追い詰められたまま連打を浴びて、スタンディングダウンをもらってしまう。

この展開は最後まで全く変わらず、第4ラウンド開始まもなく、ロマチェンコの右強打をテンプルに浴びたクロラは、顔からマットに崩れ落ち、そのままレフェリーによるストップの宣告を聞くことになった。

試合結果:第4ラウンド 右フックによるKO勝利でロマチェンコが防衛

前述のように、クロラの善戦を期待する声がなくもなかったが、結局は相手に何もさせずにロマチェンコが圧勝を遂げた。
今回の試合に限っては、ロマチェンコがライト級でも十二分に戦えるパワーを持っている(と同時にスピードを保持できる)ということを証明したと言えるだろう。

次のファイトは?という質問について、マイキー・ガルシア、という名前を上げたロマチェンコだが、実際には政治的な理由から実現は難しそうだ。しかし、同時にしばらくはライト級で戦うという明言も飛び出たことから、IBFのリチャード・コミーあたりとの統一戦を当面の目標に置く可能性が出てきた。

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