ハイジもクララもおんじもゼーゼマンさんもみんな登場するから安心
1974年に公開されて以来、多くの日本人の心を掴んできた(最近は家庭教師のトライのCMで話題にw)「アルプスの少女ハイジ」。その原作の「ハイジ」が実写映画に。
それがこの『ハイジ アルプスの物語』だ。
アニメとほぼストーリー展開(つまり原作に忠実)で、ハイジの天真爛漫な少女ぶりはイメージ通りだし、頑固で狷介なおんじの心がハイジの愛らしさと無邪気さに解けていく様子もそのまま。ペータもクララもゼーゼマンさんも(クララの)おばあさまもみんな登場する。
いまさら書くまでもないと思うが、ストーリーは以下のような感じだ。
親を亡くし叔母デーテの家で育てられていたハイジだったが、経済的な問題からデーテはハイジの祖父(アルムおんじ)へと彼女を託す。偏屈者で村人たちからも煙たがれていたおんじはハイジを邪魔者扱いするものの、ハイジの可愛さにやがて心を開き、2人は家族になる。
ハイジは山に魅了され、山羊飼いのペータとともに山で山羊たちの世話をする毎日に溶け込んでいくのだが、戻ってきたデーテが、フランクフルトの富豪ゼーゼマン家の一人娘クララの遊び相手としてハイジを連れ去るのだ。心の病から歩くことができなくなったクララとはすぐに打ち解けるハイジだったが、山での暮らしを忘れることができず、都会暮らしに馴染めないのだった。
やがてホームシックに夢遊病を発症してしまったハイジをみた医者やクララの祖母は、ゼーゼマンさんにハイジをアルプスに戻すよう進言する。クララの気持ちを思うとなかなか踏み切れないゼーゼマンさんだったが、結局ハイジを山に送り届けることに同意する。
逆に失意に沈むクララだったが、元気になったハイジからの再三の誘いを受けて、アルプスに療養にいくことを決意。そこはハイジから聞いていた美しくも壮大な世界・・・クララの心にも大きな変化が生まれていくのだった。
もちろんクライマックスは「クララが立った!」(セリフはそのままじゃあないけど)なので、最初から最後まで安心して観ていられる。
不朽の名作の実写化として十分評価されるべき作品
主人公ハイジを演じるのは本作が映画初出演となるアヌーク・シュテファンちゃん。オーディションに参加した500人の中から選ばれたシンデレラガールだ。
演技経験がないとはとても思えないくらい、その表情、動きはハイジそのもの。実に素晴らしかった。
ハイジはアルプスの山々が見えない都会暮らしに心を病んでしまうが(その結果山に帰ることを許されるのだが)、かといって大富豪のゼーゼマン家での暮らしで辛い目に遭ってばかりいたわけではない。当主不在中のゼーゼマン家を仕切るクララの家庭教師ロッテンマイヤーさんも、教育係としてハイジに厳格な態度で臨むが、別に悪意を持っていじめているわけではない。当のクララも初めてできた親友としてハイジに心からの友情を示すし、執事のセバスチャンもいつでもハイジの味方だ。
さらにゼーゼマンの母親でありクララの祖母もまた、金持ちの傲慢さのかけらもない、公平で真に優しい貴婦人としてハイジに接する。本作では邪心を持つキャラクターは1人もいないのだ。
世界中で愛される不朽の名作「ハイジ」。その実写映画として、本作は十分評価されるべき素晴らしい出来だ。