連載『ホンダ偏愛主義』。自他共に認めるホンダマニア・元Motor Magazine誌編集部員でフリーランスライターの河原良雄氏が、ホンダを愛するようになった理由を、自身の経験を元に紐解きます。第25回となる今回は、「ホンダスポーツの原点、オープン2シーターFRスポーツのSシリーズとチェーン駆動に関する話」です。(デジタル編集:A Little Honda編集部)
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最初のホンダの4輪乗用車はずばり「S500」!
1963年10月にホンダ初の4輪乗用車として登場したのがS500。前年の東京モーターショーで注目されたS360は結局幻となっていた。S500は、全長×全幅が3300mm×1430mmで、今の軽自動車以下というなんともコンパクトなボディサイズだった。そんなS500のボンネットに収まるエンジンは「時計のように精緻」と称されたのである。
何しろ直4DOHCはわずか531cc、ボア×ストロークは54mm×58mmに過ぎなかったのだから。当時のエンジンはOHVが主流で、SOHCでも珍しかった。カムを2本備えたダブルオーバーヘッドカムシャフト(DOHC)は、ヨーロッパでは一部すでに存在していたが、こと日本では夢のまた夢のエンジンだったのである。
そのS500は、最高出力44psで130km/hの最高速を実現して話題となるが翌64年で生産終了。それに代わって57psで145km/hとしたS600へスイッチすることに。そして1966年には70psで160km/hのS800へ進化するのである。そのS800の初期で使われていたのがチェーン駆動なのだ。
その駆動方式に関して「ホンダはオートバイメーカーだからシャフトではなくチェーンなんだ」と誤解されている人も多いかもしれない。が、それは大きな間違い。縦置きされたエンジンの回転は、どこかで90度変換しなければ後輪を駆動できない。そう、プロペラシャフトはちゃんとあったんです、フツーよりちょっと短かっただけで……。
どうなっていたかを説明すると…
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