今回は日本が誇る特撮実写番組スーパー戦隊モノ(特に「恐竜戦隊ジュウレンジャー」)を英語版ローカライズして、米国で大人気を博した「パワーレンジャー」の映画化作品。
東映の特撮テレビドラマシリーズが米国で大人気コンテンツに
米国発の海外ドラマといえば、莫大な予算と緻密な作りで知られるが、それはどれも大人向けのコンテンツの話。子供向け番組となれば、アニメーションはともかく、なかなか実写での特撮作品は用意できない。
逆に日本では、ウルトラマン、仮面ライダー、そしてゴレンジャーから始まって超長寿シリーズとなったスーパー戦隊モノなど、子供向けの特撮作品はふんだんにある。そこに目をつけた米国のTV番組クリエイターのハイム・サバンが、東映側に”スーパー戦隊シリーズの米国ローカライズ”を提案したことで、米国でもこの戦隊モノが子供たち(およびオタクたち)のハートを掴むことになったのだという。
最初は日本で放映された番組をそのまま輸出することにこだわった東映だったが、結局日本人を主人公にするより設定そのものを米国に移植し、英語を母国語とする俳優、それもさまざまな人種を配役するといった英語圏へのローカライズ戦略が採用されたのだらしい。
ウルトラマンにしても仮面ライダーにしても、スーパー戦隊モノも、日本においては誕生から現代にいたるまで、TVシリーズも映画シリーズも徹頭徹尾子供向けのコンテンツであり続けているが、米国ではバットマンにしてもアイアンマンにしてもスパイダーマンにしても、映画版は大人向けのコンテンツにうまくモディファイされているが、本作「パワーレンジャー」の場合はどうであろうか。
戦隊モノファンにはたまらない、正統派
本・実写映画版「パワーレンジャー」は、6500万年前の地球に来襲したヴィランであるリタ(元はパワーレンジャーの一員だったが私欲に目が眩んで仲間を裏切った、という設定)が蘇り、再度地球征服を目論むが、それを阻むために新たに米国の高校生5人がパワーレンジャーとして選抜され、リタと対決する、というもの。
高校生を主役にしているということ、および(本作の特徴として)なかなかパワースーツを着た姿に変身せず、変身して特殊兵器(恐竜型の戦闘マシンや合体ロボなど)を扱うのが映画の終盤までひっぱる、というところが、相当に青春映画的な作りとなっていて、その意味では、観覧対象としては子供よりは大人になっているとは思うも、やはり若者向けの味付けにはなっていると思う。また、お父さん世代と子供の双方をターゲットにしたファミリー映画と思えばそうなのかもしれない。
ただ、結局興行成績ではあまり振るわなかったらしい。しかしそれでも、日本の戦隊モノを見慣れた者にとっては懐かしいと言うか昔ながらの戦闘シーンに胸が熱くなる、ある意味正統派の戦隊モノ映画になっていると思う。
ファンには申し訳ないながら、実は僕はスーパー戦隊シリーズには全く疎くて(どちらかというと好きでなくてw)やや醒めた思いで見てしまったことを告白しておく。ただ、こういう映画が好きな人は相当数いると思うので、繰り返しになるが、お子さんと一緒に鑑賞するなら毒気もなく安心して観られる作品、と一押ししておこう。