年間100本以上の映画を鑑賞する筆者が独自視点で今からでも・今だからこそ見るべき映画を紹介。
今回は、無人島で無数の用途を持つ便利な死体を手に入れた男の不可思議な脱出劇。死体役をハリー・ポッターのダニエル・ラドクリフが演じて話題に。

奇想天外なストーリー

無人島に漂流し、生きる気力を無くしていた若者ハンクの前に現れた、1人の男の死体。
ハンクは死体が腐敗ガスを出していくことに気づき、そのガスを推進力にできると考え、死体をジェットスキーに見立てて島を脱出することに成功する。

奇跡の生還を目指すハンクは死体をメニーと名付け、上陸した海岸から森を抜け、人里を目指すが、徐々にその死体が喋り始めて・・・。

ジェットスキー以外にも、髭が剃れる歯、雨水を蓄えられる水筒のような体、死後硬直で立木を叩き折れるくらい硬くなった腕など、まるで スイスアーミーナイフのように便利な死体メニーと、孤独な青年ハンクの不可思議で可笑しくも哀愁漂う友情物語。

妄想?ホラー?でも、どっちでもいいか、という気分になっていく若者2人?の青春ストーリー

まずは単純に死体の腐敗ガスを利用して無人島を脱出したはずが、そのまま死体をおいていくことにどこか抵抗があったハンクは、死体を担いだまま人里を探し始める。その時点で、彼の精神状態は相当に変だw。
その後、死体が持つさまざまな便利な機能に気づき、うまく活用することで生き延びるハンクだが、寂しさのあまり、とにかく死体に話しかけ続ける。すると、なぜか死体に人格が宿り、喋り始める!

これってハンクの妄想?それともちょっとしたホラー?
観ている我々からすると、このあたりからわけがわからなくなってくるのである。
女性と付き合ったことがないけれど、その素晴らしさは十分に知っているハンクが、拾った水着写真雑誌をメニーに見せるとメニーの股間が反応する。ハンクはその股間のふくらみが示す方角の先に人家があると確信して移動を開始するのだが、そんな証はどこにもなく、全ては彼の思い込みだ。

そもそもハンクがなぜ無人島に漂流していたのかという説明は本作にはない。これは孤独な青年の哀しい妄想の話なの?そんなふうにも見えてくる。

しかし、見方を変えると、死体のメニーに友情を感じ、孤独を癒しながら人生への執着を取り戻していくハンクのさまは、微笑ましく、そして若者らしい天真爛漫さがあって、終始明るい気分で観ていられる。ある種の青春ストーリーとして成立しているのである。

あまり深く考えずに、そんなこともあるか(まあないけど)と思って、ハンクとメニーの奇妙な友情劇を楽しむ。それでいいんじゃないかな、と思う。

最初こそ、ダニエル・ラドクリフはなんでこんな仕事受けたかな、と苦笑せざるを得なかったが、これはこれでその怪演を褒めてあげるべきだし、それだけの出来になっていると思うのである。

画像: 映画『スイス・アーミー・マン』予告編 youtu.be

映画『スイス・アーミー・マン』予告編

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