年間100本以上の映画を鑑賞する筆者が独自視点で今からでも・今だからこそ見るべき映画を紹介。本作『パーソナル・ショッパー』は、セレブの買い物代行”パーソナル・ショッパー”として働く女性を襲う不可思議な恐怖を描いた作品だ。

トワイライトシリーズなどでブレイクした美女クリステン・スチュワート主演

死別した双子の兄ルイスからのメッセージを待つためパリに滞在する女性モウリーンは、超多忙なセレブの服やジュエリーの買い物を代行する”パーソナル・ショッパー”として生計を立てている。

モウリーンとルイスは霊媒師であり、ルイスは死ぬ間際に「(死後も魂が存在する証として)必ずサインを送る」と約束する。だからモウリーンは知り合いがほとんどいないパリで彼からのサインを待ちつつ、パーソナル・ショッパーの仕事を続けているのである。

そんなとき、彼女のiPhoneに差出人不明のテキストメッセージ(SMS)が届き始める。彼女を常に観察しているかのような振る舞いに戸惑い恐怖を感じるモウリーンだったが、やがてこのSMSは霊界にいるルイスからのものではないかと思うようになる・・・。

セリフが少なく、抑えた演出の中で、もっとも饒舌なのはスマホでのやりとり。静かで暗い画面が続く典型的なサイコスリラーのようでありながら、同時に霊的な存在を意識させられていくハイブリッドな不安と恐怖を感じさせる演出に引き込まれていく。トワイライトシリーズなどで存在感を放つクリステン・スチュアートがヒロインのモウリーンを演じるが、彼女のファンなら、期せずしてけっこうなサービスカットが拝める実にお得な作品にもなっている。

(関係ないけれどクリステン・スチュワートはバイセクシュアル、というか、最近の恋愛対象としては同性メインということで話題になっている。彼女が持つ透明感とともに中性的な魅力を考えるとさもありなん、という感じだ)

死別した兄からのサインを待つ女性に届いたメッセージとは

本作は、パーソナル・ショッパーとして働く女性が、購入した服やアクセサリーを実際に身につけて、雇い主であるセレブの家で寝食するといった”禁じられた行為”をしてしまうことで、秘められた悪意というか犯罪に巻き込まれていくというサスペンスとして紹介されていた覚えがある。

しかし、実のところ伏線となっているヒロインのモウリーンの兄ルイスとの霊的な交信のほうが重要であり、スピリチュアルなモードが強い。予備知識なく観ると、かなり違和感というか驚きを感じることだろう。

全体的にいうと、よくわからないというか、作中で起きるある事件は、モウリーンを深く巻き込むことはない。中心となるのはやはり死別した兄ルイスからのサインを待つモウリーンが、ちょっとした不自然な出来事が起きるたびに、「あれ?これはもしかしてサイン?」と不安と期待が混ざった反応をすること自体にあり、彼女自身が恐怖のどん底に陥るような危険な展開はない。

だからハラハラドキドキではなく、なんとも言い知れない不安や心配、といったトーンに共鳴するのが本作の味わいだと言える。実際、見知らぬ相手からとスマホで交信しながら、徐々に恐怖感が薄れ、背徳的な好奇心(≒性的な興奮)にとらわれていくモウリーンの気分はかなり共感するのではないか?だから自撮り写真を送って、という相手のメッセージに対して躊躇なく応える彼女の姿に違和感はないはずだ。

逆にいうと、日常的に感じさせられるようなちょっとした不安感。誰かわからない相手からの突然のメッセージ(現実だと大抵はスパムだがw)に対する恐れと興味。そうしたわずかな不安感をずっと持たされることが、本作の真骨頂と言えるかもしれない。

画像: 映画『パーソナル・ショッパー』予告 youtu.be

映画『パーソナル・ショッパー』予告

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