ホンダのスポーツのDNAが“ニュル”で解き放たれた
世界有数の耐久レース「ニュルブルクリンク24時間レース」は、ドイツばかりではなく世界中から注目されるレースである。その舞台となるのはドイツ北西部のニュルブルクにあるサーキット、「ニュルブルクリンク(ニュルとも呼ばれる)」である。ここはノルトシュライフェ(北コース)と呼ばれる全長20.832kmのコースと5.1kmのグランプリコースで構成されているが、ニュルブルクリンク24時間レースは、この2つのコースを使って文字どおり24時間もの間、決勝レースが行われる。
またニュルブルクリンクは、クルマ好きの聖地ともなっていて、いつかはここを走ってみたいと多くのドライバーが憧れる場所でもある。さらにここは世界中の自動車メーカーが新型車の開発に使う難コースで、「ニュルでこの走りができれば合格」といった評価基準にされている場所でもある。それは日本車メーカーも同じで、とくにホンダはニュルでの走りにとても力を入れている。
たとえばホンダ シビック タイプRは、ニュルブルクリンク北コースのFF車最速タイムの記録ホルダーだ。ラップタイムは7分43秒80。先代シビック タイプRが記録した7分50秒63をなんと7秒近く縮めている。さらにポルシェもコルベットもルニーも“ニュル最速”の称号を日々、争っている。
そんなニュルブルクリンク24時間レースの決勝レーススタートの直前に、なんとも幸運なことだがこの聖地を私自身も走ることができた。もともとここは走行券さえ買えば誰でも走ることができるのだが、今回は特別に世界有数の有名レースの直前、つまりすでにコースサイドに観客がいる状態での走行である。こんなエキサイティングなことは滅多にあるもんではない。
そこで自分の走行順を待っていると現れたのが、ホンダのNSXとシビック タイプRだった。同じボディカラーで揃え、颯爽とスタート場所にやってきたのだ。そしてタイプRはリアハッチにニュルのステッカーをまさに今、貼ろうとしているところ。彼もそうとう気合いが入っているに違いない。
サムズアップして「ナイスカー!」と声をかけると、「最速の称号を持つシビック タイプRでニュルブルクリンクを走れるなんて、こんなクール!なことないじゃん」とドライバーの彼は笑顔で言う。そのためにシビック タイプRに乗ってきたのだ、とも。
サーキットでこそ、その実力を存分に解き放てるシビック タイプR。これこそがホンダのスポーツの濃厚なDNAが受け継がれている1台だと言えるだろう。