とらえどころがなくて、近づいたと思ったらすぐ離れる・・・。いい意味でも悪い意味でも「こんな女、会ったことがない」と誰もが思う、不思議な女性。天真爛漫かと思いきや、すれからしの悪女のようなしたたかさや、気性の激しさも・・・。そんなちひろさんに惚れてみませんか。たとえ叶うことがない恋であっても。
不思議な空気をまとう、スナフキンのような?ちひろさん
もしぼくが気になる女性と出会ったとして、その人が元風俗嬢だと知ったら、どんな表情をしちゃうだろうな。ちひろさんは自分の過去を隠すことがありません、もちろんその過去を卑下することもありません。だから、淡々と自分から言っちゃうわけですけど、大抵の人間はその事実にドキッとして、あえて気にしてなさげな態度をとったり、同情したり、興味津々になったり、すぐヤレる?的な好奇な視線を浴びせちゃったり、とにかく平常心ではなかなかいられないものです。
ちひろさんはあっけらかんとしていて、相手がどんな風に接してこようと受け流す強い女性ですが、同時に、自分の過去に関心を抱かない、素通ししてくれるような相手を好みます。
いつもは明るくて物事に動じないように見えるちひろさんですが、たまに落ちているというか、気分が沈むときがあります。そんなときでも「元気ないね?どうしたの?」などと励ましてくるような人があまり好きでありません。ほおっておいてほしいんですね。
水商売をやっていたことから、誰とでも簡単に打ち解けられる術を知っているのですが、彼女自身は相手に気を許すことがありません。距離感を保つのがとっても難しい女性なんです、ちひろさん。
彼女の周りには、人知れず傷ついた心を隠して生きている人たちが多く集まります。ちひろさんが持つ不思議な空気がそんな人々を癒すのですが、彼女は自分も癒されようとして擦り寄ることはしないのです。
作中、ちひろさんに惹かれて集まった少女たちがちひろさんを評して「(ムーミンの)スナフキンみたい」というのですが、確かに飄々としてときに深い名言を吐くところは似てますが、スナフキンに比べるとちひろさんの中には闇も毒もあります。
例えば、彼女の過去や境遇に無駄な同情を見せる輩や舐めた態度をとる相手には、驚くほどの激しさで反撃します。ストーカーに遭えば暴力にも訴えるし、女としての自分を甘くみるような相手には、男を奪い取るくらいのことは簡単にするのです(かといって、男に惚れて自分を見失うこともしないのです)。
20代のちひろさんにいくか、30代のちひろさんにいくか。あなたならどっち??
ぼくは、沙村広明先生が描くような、ちょっとあばずれ感がある女性に弱いのですが、ちひろさんにもそれは通じるところがあります。
彼女に惚れたら、きっと人生台無しにしそう・・。でもわかっちゃいるけど、惚れちゃいそう。
そんな危なっかしい女性が好きなら、ぜひぜひ、本作買ってみてください。
え?エロいシーンはあるのかって??なくはないんですが、そういうのが良ければ、風俗嬢時代のちひろさんを描いた過去の作品「ちひろ」も併せて読むことをお勧めしますです。