昔の負い目のために、望まぬ悪事に加担し続けてきた彼は、運命の恋の相手に巡り合う。
激しいカーアクションと駆け抜ける若さの勢いをそのまま映像化した小気味いい青春映画。
耳に障害を持つ青年とその恋人の、決死の逃走劇
『きっと、星のせいじゃない。』のアンセル・エルゴート、『シンデレラ』のリリー・ジェームズという若手スターの共演。
アンセルは、交通事故で両親を失い、治らない耳鳴りという後遺症を患う青年、ベイビーを演じ、リリーは彼と恋に落ちる、ダイナースのウェイトレス、デボラ役。
共に笑顔に独特の魅力があって、出会ってすぐ2人が恋することへの不自然さを感じさせない。
主人公のベイビーは、少年の頃から車泥棒で生計を立ててきたが、運悪く犯罪者の車に手を出したことから、強盗団のドライバー役を強制される羽目になる。
やがて約束したお役御免の日が訪れるが、凄腕のドライバーとなった彼を組織は手放そうとしない。このままでは一生犯罪者の道を歩むこととなる、そう感じたベイビーはデボラを連れて逃げ出そうとするが、その試みはすぐにバレてしまう。
果たしてベイビーは闇を抜け出せるのか、デボラとの恋の行方は??
後味も爽やかな軽快なハードボイルド&青春ストーリーだ。
脚本の巧みさが目立つ佳作
本作の新しさは、映画音楽とアクション、そして観客を一体化させる素晴らしい工夫にある。主人公ベイビーは耳鳴りを抑えるために常にイヤホンで音楽を聴く。そして、車を運転する際のリズムを音楽に合わせることで、見事な操縦をみせる。
映画のBGMとして流れている曲は、登場人物であるベイビーも聴いている。同じ曲、同じタイミングで観客はベイビーの爽快なアクションや気持ちにシンクロするである。
また、本作では、主人公ベイビーをはじめ、登場人物たちの名前にまつわるエピソードや理由が共通の約束事のように巧みに仕掛けられている。それがゆえに悪役であっても、実に生き生きとして特別な存在感を与えられる。
本作には、瑣末な役というものがない。少なくともセリフを与えられた全てのキャラが、なかなかにユニークで、忘れがたい味を出すのである。