しかし、80年代ファッションに身を包む奇抜な悪党バルタザール・ブラットの逮捕に失敗したグルーとルーシーは反悪党同盟をクビになる。
あらすじ
スケールはでかいが、少々失敗がちの怪盗グルー。3人の可愛い娘たちを養子に迎え、反悪党同盟の工作員ルーシーと結婚したことをきっかけに、彼自身も反悪党同盟のメンバーとして働くようになっている。つまり悪党稼業から足を洗っている。
しかし、80年代ファッションに身を包む奇抜な悪党バルタザール・ブラットの逮捕に失敗したグルーとルーシーは反悪党同盟をクビになってしまう。
これをキッカケにグルーが悪事の道に戻ることを期待するミニオンたちだが(彼らは太古の昔から強い悪党に仕えるという習性があるのだ)、グルーがそれを拒否したため、グルーを見限って出て行ってしまう。
落ち込むグルーは、自分に生き別れの双子の兄弟ドリーとの予期せぬ再会を果たすことで元気を取り戻すが、自分たちの父親が稀代の悪党であり、その後を継ごうとドリーに迫られ、困惑する・・。
果たしてグルーは悪党に戻るのか?そして新たなライバル バルタザール・ブラットとの対決の行方は?
過去と決別したグルーと好対照な新キャラたち
本作の新キャラは、グルーの双子の兄弟ドルーと、悪役のバルタザール・ブラット。
ドルーとグルーは両親の離婚が原因で生き別れになっていた。父親に引き取られたのがドルー。母親に引き取られたのがグルーだったが、悪党稼業で大儲けしていた父親の遺産を継ぎ、悪党に憧れるドルーは、グルーを再び悪事の道に引き戻し、自分も悪党になることを夢見ている。つまり、現在の自分を否定して、新しい自分を作ろうと考えている。
悪党のバルタザール・ブラットは、かつては大人気番組の子役として人気を博していた。テレビではバッドボーイ、つまり子供ながら世界的怪盗を演じていた彼は、長じるに従って人気を失い、テレビ界を干されてしまい、それを恨みに思うあまり、いまでは番組キャラクラーさながらの悪党になっている。つまり、彼は過去の栄光にすがるあまりに悪党としての現在の自分を作り上げている。
ドルーは父親のようになりたい、という過去の”偉大な存在”に縛られ、バルタザールは大人気だった過去の自分に縛られている。
悪党であった過去の自分と決別して、新しい自分になろうとするグルーとはまさしく正反対の存在なのである。
また、グルーが自分のためではなく、愛する子供達や妻のために頑張ろうと誓うのに対して、ドルーもバルタザールもいまだモチベーションは自己愛でしかない。そんな彼らを前にしても、グルーは一瞬たりとも悪事の道に戻ることを考えない。家族との誓いはそれだけ固いのだった。
続編に期待
グルーに従うミニオンたちだが、彼らは太古の昔から生き続け、悪くて強い主人に仕えることだけを求めてきた不思議な種族だ。グルーが”いい人”になってしまった以上、ミニオンたちが彼のそばにいるためには、それなりの理由が必要だが、本作では ミニオンたちに新たなモチベーションが与えられる様子が描かれている。
これはどうあっても続編が必要だ。
改心したヒールが、ヒーローとなり、その前に立ちふさがる新たな敵が登場する。その構造を本作でもしっかり描いているものの、次こそが本番と思わせる非常に巧妙な仕掛けがなされているのが、この作品の役割であり、楽しみ方、である。