日本ではあまりポピュラーではないですが、アメリカをはじめ海外ではトップフューエルのドラッグ競技の人気がかなりあります。フツーのレースと比べ、いろんなことが規格外のスゴさにあふれているトップフューエルの魅力をご紹介します。

305mを4秒以下で走破!! 最高速度は500k/hオーバー!!!!

さて、そもそもなんでこの競技、「トップフューエル」という名称なのでしょうか? それはこのカテゴリーで使われる燃料に由来しています。これらはニトロメタン90%+主にメタノール10%の混合燃料を使います(※2015年以降の米NHRAルール)。

ニトロメタンは一般的なガソリンやメタノールよりエネルギー密度が低い(11.2 MJ/kg)のが特徴で、ガソリンやメタノール燃料のエンジンより2〜3倍の高出力を得ることが可能です。ガソリン1kgを燃焼させるには14.7kgの空気が必要ですが、そもそも分子組成中に酸素が入っているニトロメタン1kgを燃焼させるには、ガソリンよりはるかに少ない空気量(1.7kg)でOKなのです。

なお点火時期はだいたい上死点前58〜65度です。これはガソリンエンジンよりもかなり早いタイミングですが、これはニトロメタンとメタノールがガソリンよりも遅く燃える性質だからです。

セッティングにもよりますが、トップフューエル(以下TF)は毎秒5.7リットルもの燃料を消費します! 一般的な自動車エンジンと違って水冷機構を持たないTF用エンジンは、主に燃料の気化での冷却効果で機関部を冷やしています。TF用エンジンの馬力はなんとNASCARの10倍以上!(8,000〜10,000馬力)。1,000フィート(305m)を4秒以下のタイムで駆け抜けます! なお最高速は、驚異の約530km/hをマーク! 驚異的な加速で走り抜けるその姿は、迫力満点です!

画像: 「トップフューエル」は、オープンホイール、ロングホイールベース、そしてリアエンジンのドラッグスターが使われます。 www.youtube.com

「トップフューエル」は、オープンホイール、ロングホイールベース、そしてリアエンジンのドラッグスターが使われます。

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画像: こちらはガワ付きの車体のほぼ中央部にエンジンを積む「ファニーカー」のマシンです。トップフューエルと同じ、ニトロメタン+主にメタノールの燃料を使います。 www.youtube.com

こちらはガワ付きの車体のほぼ中央部にエンジンを積む「ファニーカー」のマシンです。トップフューエルと同じ、ニトロメタン+主にメタノールの燃料を使います。

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なぜ、ゼロヨン(0-400m)じゃなくゼロサン(0-305m)なの?

みなさんの中には、「フツー、こういうのって0-400mの距離で競うんじゃね?」と不思議に思う方もいるのではないでしょうか? じつは以前は1,320フィート(402m)でNHRAは競技を行っていましたが、2008年のファニーカーでの死亡事故を受けて、安全対策として距離を短縮したわけです(なお今も、オーストラリアのANDRAのレースでは1,320フィートの距離を採用しています)。

画像: 当たり前ですが、コースは直線です(笑)。なおゴール後は、ドラッグシュートと呼ばれるパラシュートを出して、空気抵抗で減速させるメカニズムを採用しています。 www.youtube.com

当たり前ですが、コースは直線です(笑)。なおゴール後は、ドラッグシュートと呼ばれるパラシュートを出して、空気抵抗で減速させるメカニズムを採用しています。

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エンジンはV8・OHV2バルブの8,190ccを搭載!

NHRAルールではエンジンの排気量は500立法インチ(8,190cc)が上限になっています。搭載されるエンジンの基本レイアウトは、1964〜1971年に作られた第二世代のクライスラー 426 ヘミ エンジンを踏襲するものです。これに、ルーツ式のスーパーチャージャーが組み合わされています。なおギアボックスは搭載せず、ダイレクトに後輪を駆動する方式になっています。

画像: 古典的なV8・OHV2バルブ・・・と侮るなかれ・・・。現代のTF用エンジンはアルミ合金削り出しのブロックと、シリンダーヘッドを採用しています。スリーブは鉄製で、水冷を採用しないのは短時間で競技が終わるため燃料の気化による冷却効果でもなんとかなることと、シリンダー内に水路を設けることによるケース剛性低下の恐れを排除するためです。 www.youtube.com

古典的なV8・OHV2バルブ・・・と侮るなかれ・・・。現代のTF用エンジンはアルミ合金削り出しのブロックと、シリンダーヘッドを採用しています。スリーブは鉄製で、水冷を採用しないのは短時間で競技が終わるため燃料の気化による冷却効果でもなんとかなることと、シリンダー内に水路を設けることによるケース剛性低下の恐れを排除するためです。

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画像: TF用エンジンの燃焼室。点火には14mmのツインプラグ方式を採用しています。各インレットポートに見える2つの穴は、インジェクター用です(計16本)。 www.youtube.com

TF用エンジンの燃焼室。点火には14mmのツインプラグ方式を採用しています。各インレットポートに見える2つの穴は、インジェクター用です(計16本)。

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画像: 一般的に現代のトップクラスのレース用エンジンではチタンコンロッドが人気ですが、TF用エンジンのコンロッドは鍛造アルミ合金製を使っています。 www.youtube.com

一般的に現代のトップクラスのレース用エンジンではチタンコンロッドが人気ですが、TF用エンジンのコンロッドは鍛造アルミ合金製を使っています。

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画像: 驚異的な出力を一気に使用するTF用エンジンは、決勝レースまでの1対1の勝ち抜き戦が終わるごとに、内部パーツにトラブルがないか分解点検します。古典的レイアウトのプッシュロッドV8ですが、その分解のしやすさと整備性の良さはTFという競技に実にマッチしていると言えるでしょう。 www.youtube.com

驚異的な出力を一気に使用するTF用エンジンは、決勝レースまでの1対1の勝ち抜き戦が終わるごとに、内部パーツにトラブルがないか分解点検します。古典的レイアウトのプッシュロッドV8ですが、その分解のしやすさと整備性の良さはTFという競技に実にマッチしていると言えるでしょう。

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ちゃんと整備しても、壊れるときは壊れます! (涙)

決勝までなんども分解整備を繰り返し、完璧なコンディションにしたマシンをクルーはドライバーに託します。しかし、それでも8,000〜10,000馬力のモンスターエンジンですから、壊れるときは派手に壊れてしまうことも・・・。

画像: 壮絶なエンジンブローの瞬間! ドラッグスターのTF車両は、ドライバーの後ろにエンジンがあるからまだマシ?ですけど・・・。 www.youtube.com

壮絶なエンジンブローの瞬間! ドラッグスターのTF車両は、ドライバーの後ろにエンジンがあるからまだマシ?ですけど・・・。

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画像: ファニーカーはエンジンが車体中央付近にあり、ドライバーがその後ろにいますから、エンジンブローしたときはかなりドライバーは怖い思いをすることになります・・・。 www.youtube.com

ファニーカーはエンジンが車体中央付近にあり、ドライバーがその後ろにいますから、エンジンブローしたときはかなりドライバーは怖い思いをすることになります・・・。

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まぁ限界を超えて派手にエンジンがぶっ壊れるシーンも、TFという競技の興行的魅力のひとつではあります・・・(苦笑)。「単に直線をまっすぐ走るだけなら技術はいらないだろ?」みたいなモノの見方をする人もいるでしょうが、ドライバーには驚異の大馬力を発生するTF車両を正確に操縦する技術が求められますし、チームはモンスターマシンを決勝まで常に完調にする整備技術が求められます。やはり、凡夫にはできないスゴいモータースポーツに他ならないです。

こちらの動画はNHRA公式YouTubeチャンネルに掲載された、ジャスト3分でTFのすべてがわかる?動画です。ぜひTFの魅力を、こちらの動画でチェックしてみてください!

画像: Encyclospeedia on Top Fuel and Funny Car youtu.be

Encyclospeedia on Top Fuel and Funny Car

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