ストーリー:本能寺の変直前の織田信長と予期せぬ邂逅を果たした若い女性の決断
京都に婚約者に会いにきた倉本繭子(綾瀬はるか)は、ホテルの予約間違いから、偶然見つけた古いホテル”本能寺ホテル”にチェックインする。本能寺ホテルのエレベーターに乗り込んだ繭子は、なぜか侍装束の男たちと出くわす。そして、そこが天正10年6月2日(1582年6月21日)の本能寺であることを知るのである。
戸惑う繭子だったが、彼女の前に現れた織田信長の冷酷非情な態度とは裏腹に、天下統一の夢に賭けた彼の熱い想いを知るにつれ、徐々に彼に惹かれていく。
そして、歴史を変えることになったとしても、彼に迫りつつある重大な危機(明智光秀の謀反)を伝えるべきではないか、という思いに駆られていく・・・。
時空を曲げてしまうほどの魅力を放つ綾瀬はるか主演
卓越したコメディアンヌとして才能を発揮する綾瀬はるかさん主演。
現代の、たまたま本能寺となづけられたホテルのエレベーターと、430年以上前の本能寺が、なぜか連結し、時空を移動できるという事象を背景にしている不可思議さを、彼女の存在感が観客にあっさり受け入れさせる。
綾瀬はるかさんの可憐でほんわかしたムードと美貌は変わらないが、天然の抜け感やコミカルな表情に磨きがかかり、彼女以外の演者では成り立たないのでは?という気にさえなる。
夢を見るのに大きいも小さいもない、実現したいかしたくないかだ
見どころはいくつもあるが、信長と繭子が心を通わせるシーンとして、天正10年の京都の街を信長に案内された繭子が「お前の夢は何だ」と問われて答えに詰まる場面がある。
繭子は「信長さんのように大きな夢を持つなんてできません」というが、信長は夢に大きいも小さいもない、と答える。
また、天下統一なんて信長さんにしかできません、と言う繭子に、できないのではない、誰もやろうとしなかっただけだ、と答える信長は実にかっこいい。大きかろうが小さかろうが、自分がやると決めたことをやるだけ。そう言い切る信長に、繭子は強く惹かれ、そして自分がやりたいことがなんなのかさえわからないような自分を恥じるのだ。
果たして彼女は流れに身を任せるように婚約し、京都にまでやってきた自分を反省して、自分の夢を見出していく。
観客もまた、信長の夢と自分の夢を比べて、彼我の差を感じるのではなく、彼と同じように、本気で夢の実現にむけて努力をしているかどうかを考え、そして改めて前向きに動き出す勇気を得るだろう。
爆笑ではなく、ニヤニヤ笑いながら見ているうちに、燃えていくのは本能寺ではなく、自分の心であると気づくだろう。