昨年は「オフィシャル」な立場で参戦!
ユタ州ソルトレイク市ボンネビル・スピードウェイで開かれる、速度記録会のことを皆さんはご存知でしょうか? 干上がった湖にできる塩の平原のボンネビル・スピードウェイで最速記録を競うこの競技は、FIA(国際自動車連盟)やFIM(国際モーターサイクリズム連盟)の公認競技として、長年世界最高速度に挑む人々に親しまれた、速度記録の「聖地」です。
昨年(株)本田技術研究所 四輪R&Dセンターは、社内公募で有志チームを編成。軽スポーツカーS660用をベースに高出力型に改良したエンジンを搭載したストリームライナーで速度記録に挑戦。その時に起用されたドライバーは、MotoGP解説者としておなじみの、ライダー/ドライバーの宮城光さんでした。
カテゴリーA、グループ1、クラス4(自動車・レシプロ過給エンジン・排気量500cc~750cc)に参加したホンダのストリームライナーは、1マイル測定区間の記録として 261.875mph (421.446km/h)、そして1キロ測定区間の記録として 261.966mph (421.595km/h)という、2つの最高速記録を樹立しました。
有志チームではありますが、ホンダのオフィシャルなチャレンジの担当ドライバーとしての責任の重さは、いかに重大なものかは容易に想像がつくでしょう。宮城さんはそんな重責を抱えながらプロフェッショナルとしてレコードを出すというミッションを、完璧にこなしたのです。
今年は、「真剣」にボンネビルで遊ぶ!
昨年の「チャレンジ」を終えた時点で、宮城さんは再び今年もボンネビルに・・・今度は2輪でチャレンジすることを考えていました。宮城さんは昨年のボンネビル・スピードウィークで、とある1台のモーターサイクルに出会いました。それはカリフォルニア州ガーデナに居を置く、Kiyo’s Garageが製作した「月光」というマシンでした。
無類のモーターサイクル・ホビーストでもある宮城さんは、「月光」の美しさに魅了されました。そしてオーナーのキヨさんにコンタクトを取り、その場で来年・・・つまり今年のボンネビルのライダーに、自分を起用してくれることをお願いしたのです。
エンスージャストとしての宮城さんの情熱に触れたキヨさんは意気投合し、晴れて今年のボンネビルに宮城さんは月光のライダーとして参加することになりました。ファン=楽しむことと、リスク=超高速域でのクラッシュ・・・この2つの要素に真剣に取り組むこと。それが今年のボンネビルにおける宮城さんのテーマでした。
昨年度・・・ホンダのオフィシャルのドライバーとしては、記録を出すことに宮城さんは専念しました。リスクをコントロールしつつ、プロとして結果・・・記録を残すことにチャレンジする。それに成功した宮城さんは自分への新たな課題として、自分の趣味として、愛するモーターサイクルでボンネビルに挑み、楽しむことにチャレンジしたのです。
長い日程スケジュールも 一切のトラブル無く走り切ったマシン
ランドスピードマシン「月光」
皆様からの暖かいご声援のお陰で無事に終了
記録は時速165mph(264km/h)
クラス記録は300km/hを超えた辺りですから残念ながら
記録更新ではありません。
とは言え 全米BornFreeでNo1のタイトルを獲得した「月光」は
驚くほどの耐久性で過酷な速度記録に挑戦してくれました。
ショーでプレゼンスを発信 コースでパフォーマンスを
見せてくれたのですから 十分に満足するチャレンジです。
元々は このマシンの美しさに惚れ込んでのライディング
記録云々より「月光」に乗りたい一心でのアプローチでした。
昨年の4輪ストリームライナーでの日本人初のFIM公式クラス最高速度記録達成と200mphライフタイムメンバーへのチャレンジ
今期は2輪専用マシンでの最高速チャレンジは かけがえの無い
時間となりました。
今回の我がままなチャレンジにご賛同して頂きました皆様
素晴しいマシンを準備して頂きました清永御夫妻
美しい写真を撮影して頂いた増井貴光カメラマン
何のメリットも無いのに来てくれた宇佐美君(笑)
何時もFBで暖かく応援してくださる皆様
ありがとうございました。
上記の引用のとおり、残念ながらクラス記録を塗り替えるという「1つの目標」は達成されることはありませんでした。しかし「真剣」に「遊ぶ」という大きな目標については、十分に達成されたことは宮城さんのコメントからもわかります。
好きなことに一生懸命になる・・・言葉にするのは簡単ですが、それを本当の意味で実践することの難しさを、バイクやクルマを趣味にする私たちは一番よく知っていると思います。プライベーターとしての立場でボンネビルにチャレンジする・・・レーシングライダー/ドライバーとして数々の実績を残し、MotoGP解説者などジャーナリズムの世界でもその地位をすでに築いている宮城さんですが、新たな挑戦の場を探し続けるその姿勢は「好きなことに一生懸命になる」のあらわれに他ならないのでしょう。
同好の士のひとりとして、宮城さんに拍手を送りたいと思います。そしてこれからの宮城さんのチャレンジに、みなさんと一緒に注目していきたいです。