冷酷な殺し屋たちが無慈悲に殺しあう、ブラックユーモア満載のアクションサスペンス。
8人の悪党が集まったこの作品は、クエンティン・タランティーノ監督の第8番目の作品でもある。
雪嵐に隔絶された小屋に8人の曲者が集結
舞台は南北戦争終了後のアメリカ。猛烈な吹雪を避けてミニーの紳士洋品店に集結した8人の男女(正確に書くと男7人と女1人)。元・北軍の騎兵隊の賞金稼ぎのウォーレン、賞金首を生きたまま絞首刑執行人に渡すことを生きがいとする”ハングマン”ことルース、重罪を犯してルースに捕まった女ドメルグ、保安官に着任予定と名乗る元南軍の南部の略奪団のリーダー マニックスなど、とにかく曲者揃いだ。
彼らはそれぞれに過去の経歴に何らかのつながりがあり、そこに集まったのは単なる偶然ではない。
果たして彼らは些細なことをきっかけに殺し合いを始める。孤絶された密室での逃げ場のない戦い・・・生き残るのは誰か?
160分の長丁場を一気に見せるタランティーノ独特のリズムとハードボイルドな空気感
本作は160分を超える長編だ。
小屋にたどり着くまでに結構な長さの導入部があり、登場人物たちの謎めいた素性が本人からでなく、別の登場人物によって語られる(ということは、それが本当かどうかもよくわからない)というスタイルで、徐々に人間関係が明らかになっていく。
異変というか、事件が起こるのは後半に入ってからであり、それまでは登場人物たちのキャラ紹介に相当の時間を割いているのが本作の特徴だ。逆にいうと、まあまあダラダラとそういうシーンが続くので、画面に緊張感とそこはかとなく漂う不安で剣呑な雰囲気はあるものの、集中力を保つのがやや難しいかもしれない。
とはいえ、そこはタランティーノ監督ならではの、独特の間というかリズムがあって、ファンにはたまらないいつもの長台詞や切れのいいシーンの切り替えは健在だ。また、全ての登場人物が胸に抱く乾いた悪意に、ゾクゾクさせられることだろう。
誰がどうやって事件を起こすのか、どういうきっかけで争いが始まるのか、そしてその背景とは何か?いつもと違う、ミステリータッチでやや静かな進み方をする前半を耐えきれれば、後半にはいつもながらの過激なアクション、というより暴力が炸裂する。あとは一気に結末まで見入るだけだ。