ナイジェリアから移民してきた黒人医師が、全米最高のスポーツエンターテインメントが持つ根源的な危険性を告発。実話ベースの問題作をウィル・スミス主演で映画化。
移民や亡命に対して異常なまでの厳しい態度を取り始めた米国の現状を考えると、実にタイムリーな作品。

アメリカンフットボールという、全米最高のエンターテインメントの存在意義を揺るがしかねない告発に踏み切った、勇気ある医師の物語

ウィル・スミス演じるベネット・オマルは、ナイジェリアからの移民だが、臨床病理学・解剖病理学など法医学の免許を持つ優秀な医師。ペンシルベニア州ピッツバーグで、検死官として働いていた。

そんなオマルのもとに、地元のアメフトチームのの花形プレイヤーだったマイク・ウェブスターの検死の依頼が舞い込む。NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)史上最高のセンターと呼ばれたマイクは、50歳にしてアルツハイマーの症状に悩まされ、家族にも見放された状態で変死を遂げていた。
彼の症状や死因に不審を抱いたオマルは、アメフトのプレイ中の激しいタックルによる衝撃が、選手の脳神経に異常をきたす原因になっているのではないかという推論に辿り着き、精神異常をもたらすこの病症をCTE(慢性外傷性脳症。chronic traumatic encephalopathy)と名付けるが、NFLからの猛反発によって、世間からバッシングを受けるようになっていく・・・。

米国の自由と民主主義に夢と希望を抱いてやってきた移民である黒人医師が、米国のアメリカンドリームの体現ともいえるアメリカンフットボールという、最高のエンターテインメントを根底から揺るがしかねない告発に挑む、衝撃の実話の映画化。

ありとあらゆるスポーツや挑戦にはリスクがつきもの

上述のように、本作では全米で毎週2000万人を動員するという大人気スポーツであるアメフトの危険性を告発した、一人の医師の勇気ある挑戦を描いている。

本作によれば、アメフトのタックルの衝撃を受け続けることによって精神を病む恐れがあるという。

頭蓋骨の中で浮いている人間の脳は、60Gの衝撃で脳震盪を起こす。一方、フットボールで頭をぶつけ合うショックは100G以上。生涯にわたって激しいタックルを受け続けると、連鎖的な神経障害により脳内にキラータンパク質が発生し、少しずつ精神を蝕んでいくのだ。この恐るべき症例を「CTE(慢性外傷性脳症)」と名付けたオマルは、警鐘を鳴らし選手の安全を守るために、医学誌に論文を発表。

同じように頭部に衝撃を受けやすいスポーツならば、僕が愛してやまないボクシングも同じだ。
最近アマチュアボクシングではヘッドギアをつけなくなったらしいが、それはヘッドギアをつけているほうがかえって脳しんとう(Concussion)を起こしやすいという医師からの報告が増えたことと、同時にヘッドギアをつけていることで(視野が狭くなったり、少しくらい当たっても平気という過度な安心感のため)防御に対する認識が甘くなり、結果として頭部にパンチを受けやすく、長期的にみるとCTE(慢性外傷性脳症)になるリスクが高まっているからだという。

頭部に強い衝撃を起こすことでCTEになりやすいスポーツは他にも結構ありそうだ。ボクシング以外にもキックボクシングなど他の格闘技はそうだし、相撲もそうだろう。CTEにならないとしてもバイクや自動車のレースによる危険性はいうまでもない。

いや、スポーツだけではない。例えば起業ならば倒産や破産のリスクを抱えている。人生において、スリルや大きなリターンを見込んでの挑戦は常に大きなリスクと裏腹になっている。それが嫌ならやらなければいいのだ。

本作の主人公であるオマル医師も、別にアメフトという競技をやるべきではないと言っているわけではないし、エンターテインメントとしての未来を損ねようとしているわけではない。ただ、そこに潜むリスクをあらわにして警告しているだけである。彼自身が、大きなリスクをとって米国に移民してきている。そのリスクを冒したうえで成功をした。問題なのはリスクを隠匿しようとする体質であり、組織ぐるみの隠蔽体質に他ならないのである。

画像: 【映画 予告編】 コンカッション www.youtube.com

【映画 予告編】 コンカッション

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