世界の人口は増え続け、このままではあと100年で人類は滅ぶだろう。いますぐ淘汰して人口を半分にすれば、人類は助かる。35億の人を殺して人類を救え。
こんな戦慄の選択を迫られたとしたら?究極の悪とは、究極の善と、同じカードの裏表なのか?、と考えさせられてしまう一作。

欧州の歴史や文学、芸術などの深い造詣を駆使した話題の大ヒットシリーズの続編

『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』に続く、ヨーロッパの歴史の街々で展開されるスリリングな推理サスペンスの第三弾。メインキャラクターであるロバート・ラングドン教授を演じるのはトム・ハンクス。

病院で目覚めたラングレン教授。頭を撃たれ、軽い記憶喪失に陥っていっていた。窓から見える夜景がフィレンツェのそれであることに気がついた教授は、米国にいたはずの自分がなぜイタリアにいるのか分からずパニックに陥る。彼を看護していた若く美しい医師シエナは彼を静止するが、そのとき廊下で銃声が鳴り響き、それが教授を狙って近づいてきていることに気づいた彼女は、ふらつく教授を支えながら病院を逃げ出した。

なんとか脱出に成功した二人は、シエナのアパートに身を潜める。
落ち着きを取り戻したラングドン教授は、相変わらず続く不鮮明な記憶に悩まされながらも、病院から持ち出した自分の所持品から見つけた不思議なチューブに何か隠されていることを発見する。それはダンテの神曲に登場する地獄図(インフェルノ)だったが、その図には細かく手が加えられており、何かの暗号であるように思えた。

地獄図には署名があり、その名を検索すると「バートランド・ゾブリスト」は米国の大富豪であり、生化学者であることがわかる。TEDのようなていの講演会で、ゾブリストは近い将来人類が滅亡すると予言し、それを防ぐためにはいますぐ増えすぎる世界人口を半分に減らすしかないと主張していたが、彼は二日前に謎の自殺を遂げていた。

ゾブリストが人口の半分を淘汰するために何か良からぬことを企んでいたと直感したラングドン教授とシエナは、彼が残した地獄図がなぜいまここにあるのかは分からないものの、ゾブリストが改竄したその地獄図に秘めた暗号が示すものを探さねばならないと決意する。
ここに二人のヨーロッパを股にかけた冒険の旅が始まった。ー。

画像: ラングドン教授とシエナ bd-dvd.sonypictures.jp

ラングドン教授とシエナ

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画像: チューブに収められていたダンテの地獄図(インフェルノ)に隠された暗号とは? bd-dvd.sonypictures.jp

チューブに収められていたダンテの地獄図(インフェルノ)に隠された暗号とは?

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画像: 米国の大富豪であり生化学者のバートランド・ゾブリストは致死性の高い殺人ウィルスを世界中に撒き散らそうとしていた。 bd-dvd.sonypictures.jp

米国の大富豪であり生化学者のバートランド・ゾブリストは致死性の高い殺人ウィルスを世界中に撒き散らそうとしていた。

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人類を救うために人類を虐殺しようと考える矛盾

本作では、増大する人口がさまざまな災厄を産む最大の悪因であると断ずるゾブリストが、人類を救うことを決意することから始まる。例えば中世ヨーロッパを襲った黒死病(ペスト)の恐怖は、多くの人間の命を奪ったが、反面適度に人口を減らしてくれたことで人類を延命させてくれた、とゾブリストは語る。
このまま人口が増えれば、人類はあと100年持たないだろうと彼は考えるのだが、お金もあり頭もよく行動力もある男だけに、ある意味始末が悪い。彼はWHO(世界保健機関)に世界中の常用水に避妊効果のある薬品を頒布させようと進言したりと、とにかく人口ストップにむけて真剣に動き出してしまうのだ。(変な話だがイーロン・マスクがこういう主張に耳を傾けたらと思うと冷や汗が出る)

しかし、出生率を下げようとする彼の意見は誰からも支持されず、ならば人口を強制的に減らすしかない、という恐ろしい結論に至ったゾブリストは殺人ウィルスを開発し、それを一気に世界中に頒布しやすい場所に隠す。彼の試算では頒布後4-5日で世界中の95%の人口に伝染し、そのうちの半分は死ぬ。

ラングドン教授とシエナに指し示された暗号は、この殺人ウィルスの隠し場所であり、二人は一刻も早く謎を解いてウィルスに辿り着かねば、ダンテが描いた地獄図(インフェルノ)が現実のものになってしまう、と慄くのであった。

人類を救うために淘汰する数は?と問われて「35億」と笑って答えられる??

本作は人類を救うために人類を虐殺しなければならない、という大いなる矛盾がテーマだ。
殺人鬼、悪魔と謗られようと、世界を救うために35億の人命を奪うことをあなたなら考えられるだろうか。これは例えば「デスノート」を手にした夜神月にあなたはなれるか?という質問と同じだが、ゾブリストの場合、虐殺の咎を負うだけでなく、ウィルスによって自分も死ぬかもしれないリスクを冒すところが、ヒロイックな行動というより、より切羽詰まった選択をしていることががわかる。

本当にそれしかないのか?ウィルスを蒔けば確かに100年後の人類を救うことはできるかもしれないが、35億の人命を引き換えにする以外に、本当に他に手はないのか?その答えを見出すための努力をゾブリストは志半ばで諦めてしまったのではないか?それとも?

本作には、ウィルスを手に入れてテロリストに売ることで大金を得ようとする良からぬ輩も出てくるが、全体としては人類や地球の将来を案じる有為の人物たちの決死の行動ばかりである。方法は違うが、目的は同じであり、むしろウィルスを撒こうとしている人間たちのほうが目的に対して純粋であり、それに殉ずる覚悟があるとさえ思える。

もちろん、目的のためならなにをしてもいい、というのはやはりテロリストの考え方であり、賛同はできないし、してはならないと思うが、それでも心のうちにわずかながら怒りよりも彼らを哀れに感じてしまうことは禁じ得ない。

また、ゾブリスト自身も、作品を通して一切のためらいがないように見えはするが、実際にはウィルスを作ったのなら有無を言わさずドローンにでも積んで大都市に撒き散らせてしまえばいいわけで、わざわざ凝った”地図”を用意する必要はない。つまり、誰かに止めてもらいたかった、もしくは止められる人物が現れるなら、それは神の意志なのだろうと受け入れる意思があったのではないかと考える。

本作は、人類存続に向けての究極の選択を迫る深いテーマであるが、同時に、どんな人間にも良心があり、誰もがその良心に耳を傾ける用意はあるのだ、というヒューマニズムをも感じられる、観る者にさまざまなことを考えさせる傑作だ。

同時に、教授たちが駆け巡る街や美術館などの稀に見る美しさに目を奪われ、堪能するのもまた楽しみの一つである。

画像: インフェルノ www.youtube.com

インフェルノ

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