ドイツ人キャビンアテンダントのレナは、フライト先のチリで恋人ダニエルと落ち合うが、突如チリ軍部のクーデターによってダニエルが連行されてしまうという憂き目に遭う。ダニエルは、ナチスの残党によって支配される謎の施設コロニア・ディグニダに監禁される。レナは決死の覚悟でダニエルの救出を目論むのだがーー。
エマ・ワトソン主演、史実に基づく上質なサスペンス。

実在した拷問施設コロニア・ディグニダ(尊厳あるコロニーという意味の皮肉)

画像: コロニア・ディグニダ www.youtube.com

コロニア・ディグニダ

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1973年。軍事クーデーターによって発足したピノチェト政権。南米史上最悪と言われる独裁政権であり、非道な拷問による多くの被害者を出したことでも知られている。
本作の舞台となるコロニア・ディグニダも実在しており、1961年にピノチェト政権との強いパイプを持っていた元ナチス党員のパウル・シェーファーによって設立されたという。慈善団体という表の顔をもっていたが、実際にはチリの秘密警察の拷問施設であり、密輸用の武器庫が実態であるとされる。

ナチスドイツとチリ政府の密接な関係はよく知られるが、本作はこうした歴史的背景をうまく使って、真実味のあるスリリングなストーリーを紡ぎ出している。人権団体での活動でも知られる女優エマ・ワトソンが、窮地に陥った恋人を救い出すために命を賭けるという”強い女”を健気さとたおやかさを失わずに、見事に演じている。

悪魔は案外身近に存在している、普通の人間のふりをして

本作は、世界を見渡せばいまだに存在するであろう醜悪な社会を舞台に、いつ自分の身にも降りかかってくるかもしれない恐怖を描いている。底知れぬ悪意をもって他者に接し、非道な行為をするのは悪魔以外にあるまいと我々は思うが、案外普通の人間たちがそうした行いをしているわけで、民主主義だ人権保護だと叫んでみても、涼しい顔で悪徳に身を浸すような人間には馬耳東風なのである、いまだに。(いや、彼らは本当は悪魔なのかも知れない、人の皮を被っているだけの)

本作はそうした”未熟な社会”に我々が生きていることを思い知らせてくれるが、同時に、危機に陥った恋人を救い出すという勇気ある行動をする主人公を女性とすることで、現代的な味付けとともに、より映画の背景をリアリスティックにしているのである。

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