人類との全面戦争を避けて、多くのミュータントは能力を隠しながら生きることを選択していた。人類はミュータントを恐ることをやめ、逆に差別する状態になっていた。しかし、はるか紀元前の昔から蘇った、神のごとき力を持つ最古のミュータント”アポカリプス”の登場により、再び人類はミュータントの宣戦布告を受けることになってしまった。
X-MENの再結成や、ウルヴァリン、スコット、ジーン、ストームなど、おなじみのメンバー誕生の秘話など、ファンにはたまらないギミックの詰まった作品。
人類初のミュータントはエジプトでラーとなっていた
ミュータント(突然変異)が生まれたのは1970年代ではなかった。
人類史上初のミュータント、エン・サバ・ヌールは、太古の昔から何百回もの転生を繰り返し、紀元前3600年のエジプトにおいては、ついには神”アポカリプス”として君臨していたのである。
しかし、年老いた彼が、再び転生のために別の若いミュータントの肉体に乗り移ろうとする儀式の最中に反乱が起こり、転生を完了する前にピラミッドの地中に閉じ込められてしまう。
そして1983年のカイロに再び蘇ったアポカリプスは、4人のミュータントを部下として集めると、世界を滅ぼして再構築をしようと行動を開始する。そしてその中には、家族を惨殺され人類に絶望したマグニートー(金属を自由に操るミュータント。プロフェッサーの旧友であり仇敵)や、のちにX-MENの中心メンバーとなるストーム(天候を操るミュータント)もいた。
アポカリプスの野望を知ったプロフェッサー率いるX-MENは、神に等しいパワーを持つアポカリプスに戦いを挑むが、彼の圧倒的なパワーの前に、苦戦を強いられる・・・。
さまざまな謎やキャラ誕生の秘話が詰まった一作
X-MENシリーズは、本来であれば同じマーベルの『アベンジャーズ』シリーズに合流する多くのメンバーを持つ作品なのだが、大人の事情で独立した作品のままで、これまで幾つかのスピンオフを交えながら、人気を博してきている。
基本的には、マグニートー率いる、人類を敵視するミュータントたちと、人類との共存を目指すプロフェッサー率いるミュータントたち=X-MENの戦いが軸となった物語であると同時に、人類の中にもまた、ミュータントを恐れ”病原体”として排除するべきと考える派と、ミュータントとの共存を考える派が存在し、複雑で懶いトーンを醸し出すのが特徴である。
冒頭で述べたように、今回は初めから神として人類を見下す、ミュータントの始祖にして頂点であるアポカリプスの登場により、様々な亀裂がミュータントの間に、そして人類の間にも生まれる様が描かれている。ラジカルな方向性を安易に示す、”強い”リーダーは、ときとして非常に危険であることを、現在の世界情勢に照らし合わせて考えざるを得ない、そんなメッセージ性の強い作品になっている。
ちなみに、若い頃には髪がフサフサであったプロフェッサーがなぜ丸坊主の姿になったのか、一度は人類への攻撃をやめることになったマグニートーがなぜ再び人類の敵になるのかなど、本作においてさまざまな”事実”が明らかになっており、マニアには嬉しい一作でもある。