前作で不思議の国=ワンダーランドの危機を救ったアリスは、亡父の跡を継ぎ、自ら船長となって貿易を営んでいたが、経営は厳しく甘くなかった。そんな時、彼女はワンダーランドの親友 帽子職人のマッドハッターが病に伏していることを知り、再びワンダーランドに向かう。
親友の危機にワンダーランドに再び降り立つアリスの冒険
哀しい過去に囚われ、心を病むハッター。彼を救うには時間を遡り、過去を変えるしかない。
アリスは白の女王ミラーナのアドバイスで、ワンダーランドの時間を司る時の番人タイムと会い、時間の源”クロノスフィア”を借りようとするのだが、そこには追放したはずの仇敵 赤の女王イラスベスの姿があった・・・。
現実に向き合い、今を生きることの大切さを教えてくれる良作
アリスにとって、時間とは残酷なものであり、愛する父親を奪った”盗賊”のような存在だ。しかも親友ハッターを救いたい一心でクロノスフィアを借りたいとする彼女の願いを、時の番人タイムは尊大な態度で一蹴するものだから、ますます時間に対して敵愾心を抱いてしまうのである。
ハッターは父親を敬愛しながらもソリが合わずに、哀しい別れをしてしまったことを悔やんでいる。また、悪の象徴としてアリス達を追い詰める赤の女王と、平和を愛する白の女王の姉妹にも、悪と善とに二人を引き裂いてしまったきっかけがあった。
アリスは過去を変えることで現実を正そうとするが、実際には過去を変えることはできない。大事なことは、たとえ辛く厳しいとしても現実に向き合い、今を生きることで未来を変えること。
我々はみな、未来という時間を与えられて生まれてくる。今を生きるということは、与えられた残りの時間を上手に活用するということである。アリスの冒険は、忘れがちな真実を、我々に改めて教えてくれるのだ。
ワンダーランドを去り、自分のいるべき世界に戻ったアリスは、亡くなった父への思慕に過度にとらわれることなく、今そばにいてくれる母を大事にしようと決意する。また、自分自身の力で現実に向き合い、未来を引き寄せようと改めて勇気を示す。その姿勢は爽やかで、母親を含む彼女の周囲にも好影響を与えていく。それは同時に観ている我々にも、同じである。