トップレベルのエンジンで味わう新たなパフォーマンス
BMWとポルシェという、ともにハイレベルの動力性能と 走る楽しさを身上とするブランドが送り出すスポーツモデル。コンパクトSUVでその魅力がどう実現されたのかを試した。(文:石川芳雄/写真:永元秀和)
X4はBMWのラインナップの中では、コンパクトSUVに分類されるX3と基本骨格を共有し、フォルムをクーペ風に仕立て上げたモデルである。そしてマカンは、カイエンの弟分として企画され、同じグループのアウディQ5と基本骨格を共有する、ポルシェのラインナップにおいては小型と考えていいコンパクトSUVに属するモデルだ。
コンパクトと言ってもどちらも全長は4.7m級、全幅も1900mmを超えるわけだが、それでも北米をメインマーケットに据えたX5やカイエンよりいくぶん抑制が効いている。となれば、この手頃なサイズ感のボディに思い切り元気の良いパワーユニットを組み合わせて、スポーツ性に特化したSUVを作る発想も出てきて当然、という気がする。
まず、X4 M40i。これは専用エンジンやトランスミッションなど凝ったメカニズムを用いるMモデルではなく、手頃に高性能を実現すべくM社がチューニングを施した、Mパフォーマンスオートモビルである。
日本ではM135i、M235iに続く同シリーズの第3弾にして初のSUVだ。必要とあればボディワークにも手が入るMモデルとは異なり、スタイリングはフェリックグレーに塗られたグリル、エアインテークベゼル、ドアミラーなどが識別点で、他は標準X4のテイストを色濃く残す。インテリアではシート、ハンドル、シフトレバー、ドアシルプレート、インパネクラスターなどが専用品となるが雰囲気はMスポーツ風のエレガントな仕立て。スポーツモデルらしい演出は抑え目だ。
だがエンジンを始動させると、その派手なエキゾースト音に圧倒させられた。アイドリング状態から腹に響くドロドロとした迫力あるサウンドだし、軽くアクセルペダルを踏み込むとレスポンスがシャープで,回転が落ちる時にはパリパリと乾いたアフターバーン音までもが混じる。
エンジンはX4 xDrive35i搭載の3ℓ直6ターボ、N55B30A型をベースに、鍛造クランクシャフトやトップリング付きピストンなどM社製の部品を組み込み、同時に過給圧の向上と吸気抵抗の低減を図ることで最高出力は54psもアップした360ps、トルクは65Nm増しの465Nmとしたもの。出力向上に合わせてM3と共通のスパークプラグ採用、オイルクーラーの新設など、耐久性の確保も行われている。
もう1台のハイパフォーマンスSUVは、ポルシェのマカンターボだ。2014年に上陸を開始したマカンは世界的な人気モデルとなったが、日本では最初に2ℓ直4ターボエンジン搭載のマカンが導入され、次いで3ℓV6ツインターボエンジン搭載のマカンS、3.6ℓV6ツインターボエンジン搭載のマカンターボが上陸した。その後、マカンSとマカンターボの間を埋めるハイスペック版3ℓV6ツインターボを搭載したマカンGTSも加わり、現在は4グレードの展開となっている。
すべてのエンジンがターボ付きながら、最上級モデルにのみ「ターボ」の名称が与えられるのは、それがすなわち最も強力なシリーズを意味するからだ。ボクスター/ケイマンは例外だが、911からパナメーラまで、車名の後に「ターボ」と入るモデルがラインナップ最強力版シリーズ、というのが決まりごとなのだ。
それもあって、マカンターボはスタイリングも他のマカンと若干差別化されている。バンパー左右のエアインテークが大型化されており、そこを横切る2本のエアブレードそれぞれにLEDのインジケーター/ポジションライトが組み込まれた。リップスポイラーや角形LEDフォグライト、リアの角形4本出しテールパイプ、標準で赤いブレーキキャリパーなどもマカンターボ専用アイテムだ。これらの意匠変更に伴い全長は少し伸びて4700mm 。標準マカンの全長は4680mmでX4と同じなのだが、マカンターボはわずかに長いのだ。全幅はマカン1925mmに対してX4は1900mmと25mmスリム、全高は1625mmで同一。SUVの中ではロー&ワイド傾向が強い2モデルと言って良さそうだ。
マカンターボのエンジンは、マカンSの3リッターV6のストロークを伸ばした3.6リッターのCTL型。各バンクにターボが備わるツインターボで、吸排気両方のバルブタイミングを連続可変制御するバリオカムと、リフト量も連続制御するバリオカムプラスも盛り込まれ,400ps/550Nmという高出力を獲得している。(続きはMotor Magazine 2016年10月号で)