BMWのエンジニアは言う。「今後10年でクルマは過去50年で経験した以上の変化をする」と。それはクルマそのものについてのハード面、ソフト面、クルマ周辺の物事についてなど様々な領域に関して言えることだろう。具体的にはどういうことなのか。今回、“BMWイノベーションデイ2016”に参加していくつかのプレゼンテーションを受け、さらに2台の最新モデルを試乗することで、その一端を知ることができたので報告をしたい。(文:荒川雅之/写真:BMWジャパン)
まず“iパフォーマンス”戦略についてだ。そもそもこの技術的進展は2000年の“エフィシエントダイナミクス”に始まる。この次の段階が08年の“アクティブハイブリッド”投入、さらに13年の“BMWi”の誕生があり、今回“iパフォーマンス”という技術戦略が謳われることになった。具体的には225xe、330e、X5 xDrive40e、740e、740Le/Le xDriveの5モデルに“iパフォーマンス”というサブネームがつくことになる。
そして、これを横軸でみると、現在のBMWラインナップは5つに整理することができる。それはスポーティな方から言うと「Mモデル、Mパフォーマンス、通常モデル、iパフォーマンス、BMWi」ということになる。通常モデルを中心にして見るならば、ダイナミック性能重視方向とエフィシエント性能重視方向にそれぞれふたつのステージがあるというわけだ。
さて、740Le xDrive iPerformanceを紹介しよう。エンジンは2ℓ直4DOHCでツインスクロールターボを装着、最高出力は258psで最大トルクは400Nm。これに113ps/250Nmのモーターが組み合わされたプラグインハイブリッドだ。駆動用のバッテリーは9.2kWhのリチウムイオンで、スペックシートにはEV走行航続距離は45kmとある。
ドライブモードは3つある。まず多くの場合に使うことになる“オートeドライブ”モードは、バッテリーの充電量が十分にあり、急加速をしない限り80km/hまでEV走行となる。実際にこの速度を超えるとわずかな音の変化でエンジンが始動することはわかるが、動きはきわめてスムーズだ。また、これ以下のスピードでEV走行をしているときは、きわめて静かである。
次は“マックスeドライブ”モードでこれは140km/hまでEV走行が可能だ。ただしキックダウンするほどアクセルペダルを踏み込むとエンジンが始動する。3つめは“バッテリーコントロール”モードで、充電レベルを30〜100%の範囲で選択すると、そこに達するまではエンジンが常にかかった状態になる。
さて、9.2kWhのバッテリーは欧州の通常の電源(16A/230V)を使うと2時間40分でフル充電できる。試乗開始時にはフル充電されていたがほぼEV走行のみで22km走った時点でバッテリー残量は50%になった。カタログ上のEV航続距離は45kmなので、そのとおりの性能を発揮していることになる。
その後、バッテリーコントロールモードで走ったが、常に4気筒エンジンが稼働していると音がけっこう耳につく感じがした。EV走行時があまりにも静かなためということもあるが、そのギャップは大きい。
再度、オートeドライブに戻して走り続けるとバッテリー残量が7%くらいになるとエンジンがかかり、15%になると充電のためのエンジン稼働はなくなった。試乗後にエンジニアに訊いたところ、一度バッテリー残量が7%になると充電のためにエンジンが稼働して、さまざまな状況に応じて充電量は7から20%の間で変化するとのことだった。(続きはMotor Magazine 2016年10月号で)