気がつけば50歳を過ぎていた。腹も出るし、シワも増える。しかしそんな私にも若い頃はもちろんあった。西湘バイパスで出会った1台のFZが私にあの頃の思い出を鮮やかに思い出させたのだった。
月刊オートバイ9月号付録 RIDE「The young sweet speed way」より
月刊オートバイ9月号付録 RIDE「The young sweet speed way」より
1985年夏。私は大学の傍、ガソリンスタンドでアルバイトをしていた。というか、アルバイトに明け暮れて大学にはほとんど顔を出していないようなありさまだった。
そんなとき、スチュワーデス志望(いまならCAというべきだろうが笑)の女子大生 厚子が後輩のアルバイトとして入ってきた。私は一目で彼女のことを好きになった。
しかし、私がもたもたしているうちに、いち早くFZ乗りで親友のケイスケが厚子に声をかけ、デートに誘い始めた。どんな高性能バイクでも、バイクは乗り手の腕だ、というのが私の口癖で、ケイスケには負けない自信があったものの、恋の競走に関しては彼の方が一枚上手だったということだろう。
ところが、しばらくして、厚子が思いつめたような顔をして「相談がある」と話しかけてきた。
ケイスケと喧嘩でもしたのかと思いきや、そもそも付き合ってはいない、友達以上の関係にはなっていないという。
「先輩のことが好きなんです!」厚子は私にそう言った・・・・。
私の心臓は、まるでロードスポーツバイクのように激しく音を立てて動き始めたのだ。
親友にとられたと思っていた意中の異性が、実はあなたのことが好きだという。
あなたならどうする??
私がどっちの選択をしたかって??
私はケイスケを裏切れず、厚子の気持ちに応えることをしなかった。本当はどちらが正しかったのだろう・・・。
甘く切ない思い出は、今でも私の胸を小さく小さく締め付けるのである。
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