エンジンの存在感がハンパない、実に面白く、扱いやすいモデルだ。
世界のカスタムビルダーを刺激するキャンパスとしてのR nineT
ロレンスの読者であれば、世界中のカスタムビルダーたちが、カスタム素材としてR nineTを採用している事実をご存じだろう。現在、ヨーロッパを中心として、カフェレーサーをメインとした、クラシックな方向性でのカスタムが流行しており、積極的にその後押しをしているメーカーの一つがBMWであり、さらにそのベースモデルとして提供されているのが他ならぬR nineTなのだ。
メーカーがどうやってこのカスタムシーンを後押しするかというと、
・フレームに手を入れることなく、カスタムしやすい車両(パーツを外しやすいとかね)を有力なカスタムビルダーに提供し、自由な発想でカスタムしてもらう。
・そのうえで完成したカスタムに使用されたアクセサリーやパーツをメーカーが公認する。
となる。
BMWで言えば、日本の4大カスタムビルダーと組んだR nineT Custom Project、 Deus Ex Machinaと組んだ「 The Heinrich Maneuver」や、サーフボードとバイクという”波と風”を体現するPath22などのカスタムプロジェクトがそれだ。
つまりR nineTは真っ白なキャンパスであり、自由にどのようなカラーにも染められる、というベースモデルとしての位置付けであり、ノーマルの車両自体はあくまでベースモデルとして、強い個性を与えられてはいないのでは?と僕は思っていた。
くっそ、おもしれー・・・
ところが、実際に乗ってみると、これがめちゃくちゃ面白い。
いい意味でフルスウィングで期待を裏切られたのだ。
まず、エンジンをかけると、即座にいい感じの轟音でボンっとばかりに元気よくエンジンがかかる。(旧車乗りの僕には、毎回の儀式のように、チョークを引いて、何度かセルを回してようやくエンジンがかかると、少しホッとする、という日々の感覚で構えているので、最近のバイクに触れるといつも拍子抜けするのだ)
走り出すと、低速でスロットルを戻すと、ガクンっ!とばかりに失速するので、最初はギクシャクした。スロットルを開ければ瞬時にシュパッと加速するし、スロットルを戻すとフュンっと失速する。R nineTに限らず、ドゥカティのモンスターやスクランブラーを乗っても同じ感覚はあって、ZIIのように古いバイクのアバウトさに慣れた自分には、低速での取り扱いはちょっと緊張した。
ハンドリングが特に良い、という感じはなかった。やや幅広のハンドルバーは、セパハンにでも変えたいなとすぐに思ったし、乗り終わるまでずっと思っていた。リーンの感じもシャープというより、やや重たげに思った。
もちろん乗りにくいということではなく、積極的にきっかけを与えてやれば、ちゃんと曲がるし思い通りに動く。ただ、操舵性で操るというよりも、十分すぎるエンジンパワーで立ち上がり重視で乗っていくバイクだとは思ったのだ。パワーバンドは広く、街中では(6速のうち)3速までしか使わなくて十分だ。シフトチェンジを忘れそうなくらい、である。
そう。
このバイクはエンジンが面白い。いや、面白すぎる。
例えば、信号待ちをしているときにでも、軽くスロットルをひねって空ぶかしすると、一瞬左側に車体が揺れたと思ったらすぐに右側にフンっという感じで揺れ戻しがある。この挙動はなんどやっても再現する、このバイクの癖のようだ(ボクサーエンジン特有の動きなのか、R nineTだけの癖なのかはわからない)。それがちょっと面白くて=大型の犬のような動物的な反射のようで なんどもやってしまった笑。こういう無駄とも思える動きにライダーは意外に反応すると思う。
で、実際に走ると、この小気味よい振動と、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ っ というエンジン音がすさまじくやる気にさせてくる。110馬力という、十分凄いが、いまとなっては当たり前な程度のパワーは、公道でオートバイを楽しむには、最もちょうどいいのかもしれないとも感じた。とにかく、充分速いし、止まるし、安定していて不安を感じさせるようなところはまったくないし、走っていても停まっていてもエンジンの存在感はハンパない。
振動と音。これがライダーの体を貫き、そこから走りだすキッカケと走り続ける勇気を注入してくる。このバイクは、確かにカスタム素材として最高のバイクの一つかもしれないが、そのままで乗っても、実に面白くて、毎日乗っても飽きないはずだ。
そう。R nineTは、白いキャンパスではあるだけでなく、すでに完成された一枚の名画でもあるのだ。
あ、ハンドルだけは狭く低いものに変えるけどw
2016年1月1日以降
税込希望小売価格(消費税8%) 1,925,000円
(消費税抜き希望小売価格1,782,407円)
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