エンジンが燃料を燃やして動力を得るための流れ「吸入→圧縮→爆発→排気」の工程を1サイクルと呼ぶ。ピストンが上下することでこのサイクルを繰り返すわけだが、ピストンの上下運動の片道を1ストロークと呼ぶ。
ピストン1往復、すなわち2ストロークで1回のサイクルを完了する「2ストローク1サイクルエンジン」。これを略して2ストエンジンと呼んでいる。
なぜ2ストに惹かれるのか?その理由を改めて考える
01. 爆発回数倍増で大きなパワーを獲得!
ピストンが2往復する間に1回爆発する4ストエンジンに対して、2ストエンジンは1往復に1回爆発する。エンジン回転数が同じなら2ストは4ストの2倍爆発しているので、それだけパワーを得やすくなる。
そのメリットは小排気量車ほど大きく、かつて原付スクーターがすべて2ストエンジンだったのはそのためだ。
1970年代後半、ホンダが世界GP復帰に当たって開発した4スト500ccレーサー「NR」は、足かけ4年のレース参戦の中で結局2スト500ccマシンを実力で打ち負かすことはできなかったのに対して、82年にデビューした更新の2スト500ccマシン「NS500」は83年に世界チャンピオンを獲得。
これも2ストの優位性を物語るエピソードだ。
02. シンプル・イズ・ライト!ライト・イズ・グッド!
2ストエンジンは独立した吸排気バルブ機構を持たないのが構造的な大きな特徴。
ピストンの上下動に伴うクランクケース内の圧力変化と、シリンダー内壁に開けられた複数の穴、そしてピストンの位置によって吸入、掃気、排気がコントロールされている。
4ストエンジンのシリンダーヘッドには、カムシャフトやバルブ、バルブスプリングなどが組み込まれているが、2ストエンジンのシリンダーヘッドは端的に言ってしまえばただのフタだ。
構造がシンプルで故障する要因が少なく、4ストエンジンより圧倒的に軽くコンパクトに出来ることも、コストがかけられない小排気量車や「軽さが正義」のスーパースポーツモデルにこぞって採用された大きな要因だ。
03. チャンバー命!!
2ストエンジンのマフラーは「チャンバー」と呼ばれ、中央部分にかけて徐々に太くなり、そこからテールエンドに向けて細くなる、独特な形状をしている。
これは、シリンダー内に新しい混合気を入れる掃気工程と、燃料ガスを排出する排気工程が同時に行われる、2ストエンジン独特の構造によるもの。
後部の細くなった部分で排気ガス圧力の一部をエンジン側にはね返し、燃料ガスと一緒に外に出してしまおうとする混合気を燃料室に押しもどす役割を果たしている。
2ストエンジンにとってチャンバーは重要な性能部品のひとつで、その長さや太さでエンジン特性が大きく変わる。ここも2ストエンジンの特徴であり、カスタム時の面白さのひとつだ。
04. 二次曲線的加速にシビレる!!
2ストエンジンは、ピストンの上下動によってシリンダー内壁に開いた排気ポートと掃気ポートを開け閉めするため、エンジン回転数によって排気と掃気のタイミングが変わる。
そのタイミングと、前出のチャンバーの排気圧力が戻るタイミングが合致した時が、そのエンジンの最もパワーの出るところになる。
ある買い手にきになると一気にトルクが増し、レスポンスが鋭くなるのはそのためだ。
この二次曲線的に立ち上がるトルクは、2ストエンジンの最も特徴的かつ楽しい部分であり、弱点でもある。
エンジン回転数に応じて排気ポートの開くタイミングを変化させ絵雨排気デバイスが発達したのは、できるだけ幅広い回転数でタイミングを合わせるための方策なのだ。
05. そして伝説へ・・・?
1980年代から1990年代初頭にかけてあれだけの隆盛を誇りながら、今や新車ラインナップから姿を消してしまった2ストモデル。
その最大の要因は排気ガス規制の強化にあったと言っていい。
2ストエンジンは、構造上排気ガスに含まれる未燃焼ガス(HC)と一酸化炭素(CO)が多いという特性がある。
現在の技術を持ってすれば排気ガス規制をクリアすることは可能と思われるが、マフラー内部に触媒を内蔵することで性能低下は避けられず、ガソリンと一緒にオイルを燃やす特性上、触媒の機能維持にも手間がかかる。
レプリカブームが沈静化した中で、排気ガス対策によって牙を抜かれ、なおかつ価格の上がった2スト車を誰が買うのか。
こうして2ストモデルは姿を消していくのだった。
みなさん!2ストはお好きですか?
いまなお多くのファンをもつ2ストモデル。あなたはいかがですか??