©東本昌平先生/モーターマガジン社
第43回東京モーターサイクルショーも好評のうちに幕を閉じた。
去年のモーターサイクルショーでは、KawasakiのH2や、YAMAHAのR1など、 最速なのはメイドインジャパン である、ということを再び世界に示した新しいバイクがそのベールを脱ぎ、「やっぱりバイクは速くてなんぼだろ」と心の底では思っている僕のテンションをがつんとあげてくれたものだが、今年のモーターサイクルショーでは、そうしたパワーとスピードをテーマにしたバイクの展示は少なかった、と言える。
2016年のモーターサイクルショーで、僕がまたがったバイクは実は4台だけ。それは、YAMAHAのXSR900、ドゥカティのスクランブラー800/400、そしてSUZUKI ハヤブサだ。
XSR900は、今年のYAMAHAのイチオシの一台であるし、スクランブラーは400ccモデルと800ccモデルの大きさを確認したかった、という理由があったが、このハヤブサについては、ただ乗りたかった(笑)。
実は僕は この、ハヤブサのデザインが とても好きなのだ。横から見ても、前から見ても後ろから見てもそれとわかる佇まい。かっこよすぎるだろう・・。
かつての世界最速。今やハヤブサを超える超・高速域を駆け抜ける怪物マシンはいくつもあるが、それでもこのオートバイは別格な存在感がある。
オートバイの性能は時代とともにどんどん向上し、電子制御技術なしにはスロットルをむやみに開ける事ができないほどに、バイクは速くなった。僕の愛車であるZIIなどは、アナログな鉄の塊。40年前の日本最速のモンスターであったが、今のバイクは同じ怪物でも、デジタル制御されたサイボーグのような存在だ。映画『ターミネーター』でも第1作では無敵の怪物だったアーノルド・シュワルツェネッガーのターミネーターが、第2作では時代遅れの怪物となり、次世代のターミネーターにいいようにあしらわれる。時代の流れには、どんなモンスターも抗うことができない。
ハヤブサにしたところで同じことが言える。言えるのだが、さすがに絶版車であるZIIや、ニンジャGPZ900R、あるいはカタナとは違って、乗り方によっては、少なくとも公道ならば最新のモンスターたちと対等に走ることができるのが、現行車であるハヤブサだ。
僕がハヤブサを買うことはないだろう。
しかし、それでもこの白い怪鳥を一度は手元に置いて、ともに風を切り裂いてみたいと思うことは止められない。
性能的には、後からやってきた若い怪物たちに遅れをとるかもしれないが、その存在感ではいまでも第一線から退かない、まるで(野球の)イチローや(スキージャンプの)葛西選手のように誇り高いオートバイ。それがハヤブサなのである。