佐藤信哉。いや、敬意を込めてシンヤさんと呼びたい。バイク乗りで、一度は”スピード”に取り憑かれたことがあるライダーなら、その名を絶対に知っていることだろう。
アウトバーンで初めて、オートバイによる公道時速300キロを記録したなど、さまざまなエピソードで知られるライダー兼ライターである。そのシンヤさんが愛してやまないオートバイ。それが、YAMAHAのVmaxだ。
画像: ©東本昌平先生/モーターマガジン社

©東本昌平先生/モーターマガジン社

佐藤信哉『ストリート・アタック』とは

画像: 公道最速!と謳われたバイク乗り、佐藤信哉とVmax ーRIDE12より。©モーターマガジン社

公道最速!と謳われたバイク乗り、佐藤信哉とVmax ーRIDE12より。©モーターマガジン社

「ストリート・アタック」ととは、オートバイ雑誌「ミスターバイク」で長期連載されたシンヤさんの人気コラムだ。数多くのオートバイを乗りこなしたシンヤさんが、感じたことをダイレクトに語り尽くす、公道インプレッションである。

その中でも、RIDE12では、シンヤさんが愛してやまない一台の大型バイクに関するインプレッションが掲載されているので、紹介する。

そのバイクとは、他ならぬ YAMAHA Vmax である。

「なんだ、このデザインは!どこがアメリカンなんだ!こんなのありか!」

シンヤさんが初めてVmaxを見たのは、1985年くらいのことらしい。
初期型のVmax 1200が出た直後、ということになる。

でかくて重い、新しい型のアメリカンバイク。そう知らされたシンヤさんの心は沸き立つことはなかった。そもそもアメリカンにはあまり興味がなかったのだろう。
しかし、それ以上の事前情報のないまま、試乗会場の袋井サーキットで実物を見たシンヤさんは、文字どおり仰天したという。

こんなのありか!

甲虫を思わせるようなそのデザイン。自動車のようにぶっ太いリアタイヤ。ジェット機のようなエアダクト。そして車体のド真ん中に鎮座するV型エンジンは、並列4気筒を見慣れたオレの目にはそれはエンジンというよりも、まるでアートするディスプレイのように映っていた。

と、シンヤさんは書いている。
また、彼はVmaxのスペックを聞いてまた驚愕した。
145馬力?トルクが12Kg-mを超えているだと?そんなバイクがあってたまるか!

実際に試乗したシンヤさんは、「予想を遥かに上回る猛スピードで撮影車に突進」し、慌ててブレーキを握りしめた、と綴っている。

画像: このVmaxは2005年型らしい。 upload.wikimedia.org

このVmaxは2005年型らしい。

upload.wikimedia.org

「バイクは軽ければ軽いほどいい・・世の中にはすべて例外というのものがある」

シンヤさんはその数年後、我慢できずに自分でもVmaxを買ってしまった。
もちろん、フルパワーの逆輸入車だ。

重くて曲がらない。そんなネガティブな評価もあるVmaxだが、シンヤさんにとっては暴力的な加速を味わってしまったら、そんなことはどうでもいい。

シンヤさんは言う。バイクは軽ければ軽いほど良い。だが、世の中にはすべて例外というものがある、と。

コイツの場合がそうだ。このパワーとトルクを持つ車体をドッシリと落ち着かせ、安定させたながら走るには、この重い車重も決してマイナス要素にはならないのだ。重いからこそ、安心して開けられる。フロントの荷重がなくなり、最悪ウイリーしてコントロール不能になる恐怖がないのだ。

シンヤさんは結局、Vmaxを3台買ってしまったという(執筆時の2000年時点)。

「体はひとつしかねぇってのにな」

こてんぱんに、気に入っている、とシンヤさんは言う。

YAMAHAにとってのVmaxは「特殊」ではなく「特別」な一台だった。

話は変わるが、先日YAMAHAの広報の方々と話す機会があったおりに、たまたまVmaxの話が出た。
秀麗なデザイン、軽快なハンドリングなど、YAMAHA車を形容するさまざまな言葉があるなかで、このVmaxは、かなり特殊な一台だと思うのだが、YAMAHAの中でも、特殊、というより 特別な 車両なのだという。

実はVmaxこそ、YAMAHAの一面を色濃く表現する、象徴的なモーターサイクルなのだそうだ。

その証拠に、我々が訪れた東京オフィスの受付前に、小さく可愛らしく飾られていた一台の模型は、Vmaxであったのだ。

乗り手を選ぶであろう、巨体。暴力的とも言えるほどの凄まじいパワー。カウルなどなく、ライダーの全身に猛烈な風圧を食らわせる、むき出しの機械。

今時のバイクと比べれば、欠点が多いバイクかもしれない。それでもこのVmaxを愛するライダーたちは多い。

シンヤさんは言うのだ。「ホレた女に欠点があってもそれを言うことなく、こっちがその部分を補ってやることで解決する」と。

「重かろうが、ヨレようが、オーバーヒートしようがなんだろうが、オレは今でもコイツは最高のバイクだと思っている。」

シンヤさんほどのバイク乗りが最高の賛辞を与えるモーターサイクル。それがVmaxなのだ。

画像: ヤマハ発動機(株)東京オフィスに飾られているのはVmaxの模型

ヤマハ発動機(株)東京オフィスに飾られているのはVmaxの模型

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