今ではモトクロッサーというと、軽量なモーターサイクル・・・というイメージがありますが、第二次大戦後から1950年代の時代は、140kg以上は当たり前という、重たい鉄の塊のようなマシンが主流でした。もちろん当時としては、軽量な部類なんですけどね・・・。
そんな近代モトクロス黎明期に活躍した英国のヒーローが、ジェフ・スミスです。1934年生まれの彼は、もともとはトライアルライダーとしてその名を知られてました。1950年代にBSAチームで英国トライアル王者に輝き、その後モトクロスに専念することになります。
BSAゴールドスターで、華麗なライディングを披露。
ジェフ・スミスは1964年と1965年、2年連続で世界モトクロスGP500ccクラス王者に輝きました。当時すでに軽量な2ストローク単気筒車がモトクロスの世界では台頭し始めており、スミスの王者獲得以降は長年2ストローク車がタイトルを独占。排気量ハンデ制の新レギュレーションにより、ハスクバーナのジャッキー・マルテンスが1993年にタイトルを取るまで、4ストローク雌伏の時代は続いたわけです。
カンナムの開発にも貢献。
GPだけでなく、モトクロス・デナシオンや国際6日間トライアルでも大活躍したジェフ・スミスは、1972年に競技者としての引退を決意。そしてアメリカに渡り、カナダのボンバルディアの2輪部門であるカンナム(Can-AM)の開発とレース活動を支えます。1970年代は日本製モトクロッサー全盛期でしたが、1974年にはAMAナショナル250ccでゲーリー・ジョーンズ、マーティー・トライプス、ジミー・エリスが1-2-3位を独占する快挙を達成しました。
英国でMBE勲章を授かったスミスは、アメリカでもその功績を認められ、2000年にAMAのホール・オブ・フェイム入りをしています。こちらの動画にはBSA時代の全盛期の走りのほか、1998年のヴィンテージ・モトクロスイベントでカンナムに乗るスミスの、衰えることのない華麗なライディングを見ることができます。
計算すると今現在スミスは81歳くらいですから、このカンナムでのライディングは64〜65歳くらいのころ・・・ですかね? いやはや、偉大な王者はいつまでも速い! 脱帽です!